日活ロマンポルノのリブート(再起動)で観る現代の官能

エンタメ

三浦ゆえ

出典:映画『ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』公式サイトより

いまやアダルトな映像をテレビ画面で観る人は少ないでしょう。PC、もしくはタブレットやスマートフォンが定番。これは男性にかぎったことではなく、スマートフォンという非常にパーソナルなデジタルツールが普及したのを機に、女性にもアダルト動画を観る行為が急速に一般化しました。

 

女性向けAVのパイオニア的メーカー「SILK LABO」も2009年の起ち上げ当初はDVDをリリースしていましたが、いまや配信での販売がメインとなっています。同メーカーはストーリー仕立ての作品を基本としていますが、スマホでの視聴が前提となったことで収録時間が短めのものが主流となりました。

 

 

■映画館でアダルト映像を楽しみたいのはオヤジだけ?

 

30~40年ほど前、アダルトな映像は映画館で観るものでした。現在でも成人映画館で新旧合わせて“ピンク映画”が上映されていますが、観客の平均年齢は非常に高く、「エロい映像は映画館で観る」習慣を若いころに身につけた層が中心です。さらに全国的に成人映画館の数は減るばかりで、今後はますます特殊な趣味になっていくことは間違いありません。

 

「なんでわざわざ映画館まで行って」「しかも赤の他人と一緒に観なきゃいけないの?」というのが、いまどきの感覚です。その流れに逆らうのが狙いか、新しい潮流を作るのが狙いか、現在、「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」が始動しています。1971~88年の期間に日活株式会社が世に送り出した約1100本の成人映画=日活ロマンポルノの製作開始45周年を記念して、5人の監督が新作を撮りおろし、11月末から東京の新宿武蔵野館ほか全国で順次公開されている最中です。

 

 

■5人の人気監督がそろい踏み

 

全作、もちろんR18+指定。その5人というのが行定勲、塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫と当代を代表する人気監督ばかり、しかもロマンポルノをロマンポルノたらしめている以下のルールに則っての製作とあって、通常の映画ファンや往年のロマンポルノファンならずともスケベ心……いえ、知的好奇心を誘われるでしょう。

 

 ・上映時間は70分前後

 ・10分に1度の絡みシーン

 ・すべての作品が、一律の制作費のもと作られる

 ・撮影期間は1週間程度

 

かつてのロマンポルノは、以上の条件さえ満たしさえすればあとは何をやってもいいという自由度の高さから、次第に若手監督が表現にチャレンジする場となり、実験的な作品も多く生まれました。周防正行や滝田洋二郎といった、いまや世界的に名を知られている監督もロマンポルノ出身というのは、よく知られたところです。

 

ゆえに、その復活プロジェクトの話は5人の監督らにとって大いに刺激となったはずです。そして観る側は、単純な復活ではなく、2016年というこの時代ならではロマンポルノを、それぞれの監督“らしさ”が出たロマンポルノを期待します。

 

 

■あいまいで物足りない……裸やセックスだけでは若者は興奮しない

 

その全盛期と現在の違いといえば、観る対象としての裸およびセックスの価値が大きく下がったことが真っ先にあげられるでしょう。写真でも映像でもそれらを鑑賞するのにそれなりの費用と労力をかけなければいけなかった時代は遠く過ぎ去り、現在はインターネットに接続すれば瞬時にしてヘアヌードや無修正動画にアクセスできる時代です。それも無料で、過激なものばかり。

 

日活ロマンポルノにおける性描写は映画という範囲内で表現されるため、“濡れ場”というあいまいな言い回しこそふさわしく、セックスシーンというには物足りないものがほとんどです。大きなスクリーンで観る裸体はたしかに迫力がありますが、スマホで視聴するのに慣れた世代はトゥーマッチに感じるかもしれません。

 

同プロジェクト5作品を鑑賞した結果、2016年に復活させた意味をそれほど感じられない作品、シーンが多かったように感じました。

 

 

■頭でっかちなセックスばかり

 

頭でっかちな男女の頭でっかちなセックスの数々を前にすると、エロティックな気分からはほど遠くなります。女性が脈絡もなく突然裸体をさらしても、裸の価値が高かった時代ならそれだけで大喜びされたのでしょうが、価値が暴落した時代においては違和感が先に立ち、裸への集中力が散漫になります。

 

これはAVではなく映画であり、裸やセックスを見せてエロい気分にさせるだけが目的の作品ではないにしても、何かしらの官能的なものを感じられないと“ポルノ”とは呼べないのではないでしょうか。しかも時代を彩った数々のロマンポルノ作品へのオマージュが強いせいかもしれませんが、新作にもかかわらずどことなく古色蒼然としてみえました。

 

 

■『牝猫たち』だけがとらえていた現代の官能

 

唯一、『牝猫たち』(白石和彌監督、2017年1月14日より公開)には,ここ数年の時代性が色濃く反映されていました。3人のデリヘル嬢が主人公で、彼女らの周囲には貧困、引きこもり、不妊、育児放棄、下流老人などといった今日的な問題がごろごろ転がっています。それによって彼女たちの生き方にもセックスにもリアリティがあり、共感が引き出され、官能も刺激されました。官能とは、共感なり共鳴するものがあって初めて感じられるものなのですね。登場人物の裸やセックスよりも、めんどくさそうな人物造形に気を取られているうちは、官能を感じようがないのです。

 

リブート(再起動)する意味のあるロマンポルノは、往時をなつかしむのではなく“いま”を感じるロマンポルノです。『牝猫たち』は、特に女性に観てほしい作品でした。

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三浦ゆえ

三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~...

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