7年ぶりの村上春樹の新作長編が2月に発売! その内容を大胆予測!

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写真:ロイター/アフロ

来年2月に発売されることが発表された、村上春樹の新作長編。実に7年ぶりの長編となる。毎回だが、発売されるまでその内容は秘密のヴェールに包まれている。しかし、ファンならずとも、どのような作品なのか非常に気になるところだ。

 

出版元の新潮社からは「2017年2月発売」「400字詰め原稿用紙で2000枚の書き下ろし長編」「全2冊」という情報しか発表されていない(2016年11月30日現在)。400字詰め原稿用紙で2000枚というと、『1Q84』より短く、『海辺のカフカ』より長い作品となる。公式発表としては、それしか情報がない状態ではあるが、村上春樹本人のコメントや近年執筆した作品などから、新作の方向性を予想してみたところ、新作に盛り込まれそうな5つの要素が見えてきた。

 

 

1 ファンタジー

 

村上春樹の長編・中長編は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年)以降、「寓話的なファンタジー性の強い作品」と「現実的なリアリズム性の強い作品」を交互に発表し続けている。前回がいじめをテーマにしたリアリズム性の強い中長編『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(2013年)だったことを考えると、新作はファンタジー性の強い作品になることが予想される。

 

 

2 人間と社会の「影」

 

村上は今年10月「ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞」を受賞した。その授賞式でのスピーチは非常に興味深いものだった。村上はアンデルセンの書いた短編小説『影』を読んだことについて語り、その上で「影」についての自身の考え方を述べた。趣旨を要約すると、人間にも、社会にも、明るく輝く面がある一方で必ず暗い面がある。ポジティブな面があれば、必ずネガティブな面がある。私たちは「影」の部分から目をそむけがちだが、影を排除してしまえば、薄っぺらな幻想しか残らない。影を作らない光は本物の光ではない。ときには、暗いトンネルで自らの暗い面と対決しなければならないと村上はスピーチで語った。

 

先にもタイトル名を出したが、村上の長編に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』という作品がある。最高傑作に挙げる村上ファンも多い作品だ。この物語は主人公と、主人公の「影」が登場する物語だ。今回の新作は、主人公と主人公の影的な存在が対峙する物語になる可能性も高いだろう。

 

また、村上は“アンデルセン賞”の授賞式に出席する際に訪れたデンマークでのイベントで新作長編について、「一人称小説」「登場人物に名前がない」「とても奇妙な(ストレンジ)物語」になるとも語っている。ひょっとすると、新作は現在の村上が描く、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』的な作品になるのかもしれない。

 

 

3 東日本大震災と福島第一原発事故

 

村上は東日本大震災の2011年に、文学や学問の分野で活躍する人に送られる「カタルーニャ国際賞」(スペイン)を受賞した。受賞の際のスピーチで、原爆の惨禍を経験している我々日本人は核に対する「ノー」と叫び続けるべきだったと、福島第一原発事故を批判したことが大きな話題となった。それ以降も村上は一貫して反原発の立場を取り、福島にも足を運んでいる。このことを考えると、直接的でないにしても、原発事故や東日本大震災をモチーフにする可能性が高いだろう。

 

 

4 中年男性

 

村上は、新たな長編小説を書き上げるための実験的手法を短編小説の中で行うことが多い。例えば、短編『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』で三人称の文体を練習し(それまでの村上の小説はほとんどが一人称)、その結果、『1Q84』は全編に完全な三人称の文体を用いた初の長編となった。

 

おそらく、最新短編集『女のいない男たち』の中でも、新作長編に備えた実験的手法が試みられているだろう。この短編集の主人公たちはみな中年男性。今までの村上作品の多くに登場してきた主人公たちより若くない。現在の村上を思わせる中年男性が主人公になるかもしれない。

 

 

5 フィリップ・マーロウ

 

村上は2007年からレイモンド・チャンドラーの長編の翻訳を続けている。すでに全7作品のうち、6作品の翻訳が終わった。作品の主人公は、私立探偵。村上作品は、「僕」という名前の主人公が登場することが多いのだが、この人物造形はフィリップ・マーロウによく似ている。権力に屈することがなく、どんなときでも軽口をたたき、女性には紳士的なふるまいをし、女性からモテるといった具合だ。ひょっとすると、新作にもマーロウのような主人公が登場するかもしれない。

 

以上が、新作に盛り込まれそうな5つの要素である。さすがにすべての要素は盛り込まれないだろうが、半分くらいは何らかの形で盛り込まれるだろうと予想している。2月の発刊が待ち遠しい。

 

※参考資料:毎日新聞(2015年4月27日)、朝日新聞(2016年10月21日)、BuzzFeed(2016年10月31日)

 

 

【関連書籍】

短篇で読み解く村上春樹』齋藤隆一(著)・神山睦美(監修)

 

 

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 齋藤隆一

齋藤隆一

村上春樹ファンで構成されている「村上春樹を読み解く会」代表。普段は通信会社系の研究所に勤務し、休日を使って村上春樹の作品を読み解く作業を続けている。著作に『1冊でわかる村上春樹』(KADOKAWA)、監修に『...

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