冬のゴルフ場でボールを打った瞬間、まさかの突然死…一体なぜ?

コラム

 

寒い冬のゴルフに……思わぬ危険がひそんでいた。

 

関東近郊のとある会社で、ある社員が悩んでいた。もうすぐ会社のゴルフコンペが開催されるのだが、まだゴルフは始めたばかり。コンペまでに練習したいと思っていた。しかし、仕事が忙しくて帰宅するのは深夜になることも多かった。

 

こうして寝不足の日々が続き、打ちっぱなしにもいけないままコンペ前日の夜を迎えてしまうことに。そこで男性はコンペ当日、ゴルフ場に早く行き練習することを決意。しかしその決意が男性に悲劇を呼び込んでしまう!

 

連日の寝不足で体はだるかったが、なんとか起き上り、自宅から1時間ほどのところにあるゴルフ場へ。冬の早朝、手がかじかむ寒さ。そして、ボールを打ったその瞬間! なんと倒れ込んだ。

 

すぐに従業員が駆けつけたときには男性の意識はなく……そのまま命を落としてしまった。原因は、急性心筋梗塞がもたらした急性心不全だった。まだ30代……特に持病の自覚症状もなかった彼が、一体なぜ?

 

ゴルフ場での病の発症や突然死に詳しい吉原紳医学博士によると……。暖かい車内から寒いゴルフ場へ出たことで、その温度変化により血管が収縮して血圧が上昇傾向にあったと思われた。そして、寝不足だったことも問題だった。寝ている間に血圧は下がるのだが、寝不足の状態では血圧が十分下がらず、翌日の血圧が高くなる可能性もある。さらに、早朝という時間帯は過度の交感神経興奮が引き起こされ、血圧が上がりやすい危険性のある時間帯なのだという。厚生労働白書によると、睡眠時間が6時間未満では狭心症や心筋梗塞の有病率が上昇、5時間以下では、脳・心臓疾患の発症率が上昇するという。加えて、朝は夜間睡眠時にかく汗により血液が固まりやすくなっているため血栓ができやすく、起床後2、3時間は心筋梗塞が起こりやすいと言われている。

 

実はゴルフ場で倒れる人は、ショットを打った瞬間、もしくはその直後という人が多い。それには、この血圧の急激な上昇が関係していると考えられている。

 

さらに吉原紳医学博士によると……。普通の健康診断ではわからない痛みを伴わない心臓病で亡くなるというケースは結構多いのだという。「普通の健康診断ではわからない心臓病」とは冠動脈内のプラークとよばれる塊が破綻して血栓を形成し、血管が塞がれることでおこる急性心筋梗塞。これは極端に狭くなった血管よりも、むしろ少し狭くなった血管で起こることが多いとされ、痛みなどの自覚症状が少なく普段の健康診断でも異常を指摘されにくい。このため、若い男性が突然急性心筋梗塞を発症し、亡くなってしまうことが起こりうるのだ。

 

寒い冬のスポーツは、前日から体を整え、ウォーミングアップをした上で、少しでも体調の異変を感じたら中止する勇気も必要だ。(2022年1月18日OA)