3割の子どもが保菌しており、いま日本で症例が増えている人食いバクテリア。正式名称は劇症型溶血性レンサ球菌感染症と呼ばれ、子供の喉の奥などに多く見られる。溶連菌が傷口などから入り込み、急激に人の体の組織を食いつぶすように広がっていき、致死率は30パーセントと言われている。
「我が子といつも通り遊んでいたらまさに命を失いかけた 」と23歳の母親から番組への投稿が。愛知県東海市に住むNさんは、幼い息子を2人抱えるシングルマザー。転職をした直後、突然腰の痛みを感じ不審に思ったという。慣れない環境のためだと思っていた翌日、急激に症状が悪化。職場を早退し、家に帰ると突然の高熱。子どもを祖父に預け病院に行き、採血を行うと「人食いバクテリア」だと診断される。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、体内に侵入した溶連菌が次々と細胞を壊死させていくが、この細菌が最も恐ろしいのは進行速度が異常に速いこと。
番組で以前紹介したイギリスのDさんは、転倒した際に眉毛の上を切ってしまったことで感染。わずか数日で、目が腫れ皮膚も変色。幸い命は助かったもののこの細菌によって顔の左半分が壊死してしまった、そのようなケースも。
発症の原因は、傷口などから溶連菌が入り込むことによるのだが、Nさんはどこでこの恐ろしい細菌に感染してしまったのか?
それは1週間ほど前、いろんなものをよく噛む2歳の息子に遊んでいたときに噛まれたときだという。
実はおよそ3割の子どもが喉の奥などに溶連菌を持っていると言われ、多くの場合自身の免疫で対処できるが、彼女は疲れていたためか溶連菌の毒性が強かったため激症化したと考えられる。菌は血液に侵入し血流に乗って全身へまわり、傷口にはそれほどの変化がなかったが全身に回り異常なスピードで臓器の壊死が始まっていたのだ。
彼女の腰の痛みや高熱はこの人食いバクテリアによるもので、すでに左側の卵巣や卵管などへ侵入が始まっており、とにかく一刻を争う事態だったため、すぐに手術を行うことに。
各所で血管が破壊されているため、まずは止血。抗菌薬で感染症がよくなることを待つことに。が、翌日も症状は良くならず、体内では出血が繰り返し起きていた。そして二度目の手術を実施。すでに卵巣と卵管に炎症を起こしており、それらを摘出するしか助かる方法はない。そして無事摘出手術を終え、2日後にようやく症状が改善。1週間の入院ののち、無事退院することができたという。
当時を振り返り「まさか子どもに噛まれて、自分の血液内にばい菌が入るとは全く思わなかったです。今は前と何も変わらずに生活できています」とNさんは語った。
感染者は近年国内で増加していて、2021年には634人の感染が報告されている。専門家によると、今回のケースでは、噛まれた後きちんと消毒をして早期に抗菌薬を使えば、感染は防げた可能性があるという。傷の悪化や高熱などの異変を感じたらすぐに受診をお勧めする。(2022年6月28日OA)
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