「衣類アレルギー」という言葉をご存知でしょうか。先日、アメリカン航空の3千人以上のパイロットと客室乗務員が体調不良に陥り、なかには出勤できないほどの重篤な症状の人も出たというニュースが報じられました。その原因として「新しくなった制服」によるアレルギーだと考えられているそうです。
ふだん着るものでアレルギーが起こるというのは恐ろしい話です。何が原因で起こるのか、また、対処する方法はあるのでしょうか。アレルギー・小児科医師である清益功浩先生にお話をうかがいしました。
■衣類アレルギーって何が原因で起きるの?
「衣類アレルギー」とは、衣類および衣類に関連する物質に対して、異物として体が反応してしまう通称を衣類アレルギーのことを指します。なお、この名称は医学的用語ではないそうです。花粉症の場合、その名称からも花粉がアレルゲンだとイメージできますが、衣類アレルギーの場合はどうなのでしょうか。清益先生のお話によると……
衣類アレルギーの原因は、素材そのもの(綿、化学繊維など)だけではなく、染料、防腐剤、特殊加工に使用される薬剤、衣服にあるゴム、金属、洗剤、柔軟剤、衣服に付着したカビやダニなど、原因は広範にわたります
ここまで原因がさまざまだと、気がつかないうちに、アレルギー症状を起こしてしまう可能性がありそうです。衣類を買うときに着心地や見え方を気にしていても、アレルゲンかどうかという見方で素材まで確認する人は少ないはず。さらに洗剤や柔軟剤も原因となると、特定がより難しくなります。それでは、どうすれば衣類アレルギーを察知できるのでしょうか。
■どんな症状が出たら衣類アレルギー?
清益先生のお話によると、衣類アレルギーの症状は主に局所症状と全身症状に分けられるそうです。衣類アレルギーの「局所症状」というのは衣服に接している部分の赤み、腫れ、かゆみを指します。この局所症状に似たような症状で、靴下や下着のあとなど圧迫によるかぶれがありますが、違いはあるのでしょうか。
たとえば長時間ヘアゴムを腕に巻いたときに起きるような摩擦や圧迫によるかぶれは、その部分だけに一時的に起こります。そして、患部を掻かなければ悪化しにくいです。それに対し衣類アレルギーは、衣類に接触している部分、または摩擦、圧迫している部分以外にも症状が出ます
局所症状の場合は、接触箇所以外に症状が出るかどうかで見分けるのはわかりやすそうです。では全身症状の場合はどうなのでしょうか。
全身症状としては、頭痛、のどや目の痛み、かゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、嘔吐、咳、めまい、倦怠感、全身のかゆみ、湿疹などが挙げられます。ゴム、揮発性物質、ダニ、カビなど、原因によってはそのような体調不調も起こりえます
全身症状になってくると症状の種類も多く、衣類でのアレルギー反応かどうか判断するのも難しそうです。アレルギーの症状は個人差が大きく、花粉症ひとつをとっても症状の程度は千差万別です。そのため、長いあいだ気がつかないというケースもめずらしくないそうです。もしかして衣類アレルギーかも?と思ったときはどうすればよいのでしょう。
アレルギーを持つ人はそのアレルギーを起こす物質を異物として免疫反応を起こしているわけです。特定の衣服が原因であり着用を避けられるのであれば、避けるのが望ましい。そのために、どの要素が原因であるかどうかを知ることが大切になります。金属、洗剤や柔軟剤などは病院でのパッチテストが可能です。ゴム、ダニ、カビ、ホルムアルデヒドは血液検査でも判明します
もしかして衣類アレルギーかな?と思ったら、原因を特定し、なるべくその原因を避ける。そのためにはやはり、病院で専門医に診てもらうことがもっとも確実でしょう。素材や染料の判別は難しいですが、それ以外のほとんどの原因は病院で特定できます。長年の悩みの原因は、思いもよらぬところにあるのかもしれません。
お話をうかがった人
清益功浩先生
法律、経済など多くの資格をもつ現役のアレルギー・小児科医師。医学博士、日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医・指導医。他にもメンタルヘルスマネジメント始め、法律、経済、化学について多岐に渡る資格を有する。All About家庭の医学ガイド。