ドラマ『過保護のカホコ』に「分かりすぎて辛い…」の声相次ぐ。専門家に聞く「過保護」との付き合い方

コラム

citrus 編集部

 

現在放送中のドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)。高畑充希演じる主人公・カホコは、着る服を自分で選べない、大学へはクルマで送迎、お昼ごはんも親の手作り弁当、と“過保護の象徴”のようなキャラクターです。そんなカホコに、SNSでは「めっちゃ分かる」「私もそうだった!」と共感の声があがっています。

 

なぜ、「カホコ」への共感の声が集まっているのか? SNSの反応をもとに、女性支援を専門とする臨床心理士の方に分析してもらいました。

 

 

■娘に告白「過保護に育てすぎてごめん」

 

SNS上で目立つコメントは、

 

「私もママの手作り弁当持参で会社行ってるし、だいたい毎日送り迎えしてもらってる」

「昔の自分を思い出した。あそこまでじゃなかったけど、似たようなものだったな」

「カホコの気持ちが分かりすぎて辛い」

というリアルな意見。「自分も過保護かも?」と心当たりのある人は多いようです。元AKB48の前田亜美さんもブログで、

 

「ちょっと共感する。うちをみてるみたいなんだよねー。全部一緒な訳ではないけど、ちょっとした言葉や言い方が我が家っぽいw」

と感想を綴っています。

 

一方で、黒木瞳演じるカホコの母親・泉の行動に

 

「親はね、子供に失敗して欲しくないんだよ」

 

「3人の子どもをもつ母となった現在、ママの気持ちがわかる部分もある。よかれと思ってやってるだけなんだよね」

と共感する声もチラホラ。母親サイドも案外、過保護を自覚しているのかもしれません。中には、母親から娘に

 

「共感するところがいっぱいある。ごめんな、あんたを過保護に育てすぎたわ」

と告白するツイートもありました。

 

 

■モンスターペアレントも「過保護の一形態」

 

 

『過保護のカホコ』をきっかけに“過保護”について改めて考えた人が多いようです。そもそも現代日本では、過保護な環境で育った人が多いのでしょうか? citrusオーサーであり、女性支援を専門とする臨床心理士として活躍する福田由紀子さんに、「過保護との付き合い方」をうかがいました。

 

──現代っ子の過保護は、昔と比べてどういう違いがあるのでしょうか?

 

一般に「子どもの言いなり」「求められたらすべて与える」といった甘やかしが、過保護と捉えられていると思います。カホコは駅まで車で送迎してもらっていますが、子どもの送り迎えは現代の特徴といえるでしょう。大学入試やオープンキャンパスも保護者同伴が増えているようです。また、学校への過剰な要求やクレームをつける親(モンスターペアレント)も過保護の一形態ではないかと思います。

 

──過保護な子どもが大人になった場合、どういう問題が起きるのでしょうか?

 

最も大きな弊害は、自他の責任の境界が曖昧になることです。自立とは、自分の責任を自覚し、果たしていくこと。過保護によって「精神的自立」「経済的自立」とともに、身の回りのことを自分でする「生活的自立」を果たせなくなります。ここでいう自立とは、他人に頼らずひとりで生きていくことではありません。周りの人と繋がり、尊重し合い、支え合いながら上記3つの自立を果たすことが必要なのです。

 

 

■「自分の人生を子どもでリベンジ」と考えてはいけない

 

 

──母親の行動が過保護だと感じた場合、父親はどうすればいいのでしょうか?

 

このドラマで重要な役割を果たしているのがパパ(時任三郎演じる正高)です。ママとカホコの関係に批判的な目を持ちながら、2人の問題だと放置せずに、見守っています。なかなか上手くは言えませんが、折を見て意見をし、それぞれにフォローも入れています。第4話ではパパが「自分の存在は何なんだ」とキレました。自分の思いを家族それぞれが率直に出し合い、折り合いをつけていくことは大切な作業です。

 

──過保護にならないために、どうすればいいのでしょうか?

 

子育てのゴールは、親がいなくても子どもが生きていけるように育てること。親は子どもの自立をサポートするのが役目です。「この子にはまだ無理」と思いながらやってしまっていることを見直してみましょう。また、過保護になるのは親がヒマだからです。人生の比率を子どもに置きすぎると、自立したとき空虚感に苛まれる「空の巣症候群(うつ状態)」に陥ることもあります。自分の人生を子どもでリベンジしよう、と考えてはいけません。親はあくまで、子どもの人生にとって「脇役」であると自覚しましょう。逆に子どもの立場からすると「親がそうしたいのだから、断ると悪い」「楽できるし、まあいいか」と思ってしまいがち。自分のことを自分で決めるときに罪悪感を持ったり、親にしてもらうことに後ろめたさを感じたりするようになったら、親子関係がおかしくなっているサインです。自分の領域を守り、親に頼らず決めることを増やしていきましょう。

 

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ドラマは中盤にさしかかり、いとこの補導やママの家出などトラブルが続発。そんな中、カホコは「何かできることはないか」と思い悩んだ末、「自分のことは自分でやる」と“脱過保護宣言”をするなど、少しずつ成長します。ただ登場人物に共感するだけでなく、自分の行動や家族との関係を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。