高速道路でも一般道路でも夜、ヘッドライトを点灯せずに走っている車を時々見かける。夜でも明るい市街地なら必ず1台は遭遇する。たいていの場合ライトの点け忘れなので筆者はパッシングをしたり、横に並んで教えたりする。最初は「は?何?」という顔をしているが、無灯火に気づくと、びっくりして慌ててライトを点けて頭を下げて走り去っていく……。だいたいこのパターンだ。
いうまでもないが、夜、ライトを点けずに走ることは大変危険だ。無灯火車のドライバー自身は、「(周囲が明るい等の理由で)ヘッドライトがなくても困らない」「まだ見えているから大丈夫」と思っているのか。さすがに街燈のない真っ暗闇の山道でライトを点け忘れる車はいないだろう。しかし、ドライバーは困らなくても周囲の車から見たら無灯火車は大迷惑である。道路を横断しようとする歩行者からも無灯火車は気づきにくい。夜は、ライトを点けることによって自分の存在を周囲にアピールすることが大切だが、そのレベルの安全意識すらないのだろうか。
■そもそも、なぜライトを点け忘れるのか?
かつては高級車だけの機能だったが、近年は周囲が暗くなるとライトが自動点灯する「オートライト機能」を備えた車が軽自動車にも装備されるようになった。しかし、相変わらず無灯火車は多い。増えて来たのは1990年代の終わり頃からだと思う。2000年に入ってからは特に多くなった印象だ。そしてこの傾向は、自発光式メーターの普及に比例している。自発光式メーターとは1989年発表の初代セルシオに初採用された装備で、エンジンをかけると同時に昼間、夜間関わらず、メーターパネルの照明が点くあの装備である。
メーターそのものの視認性はとても良くなるが、目の前が明るくなると安全意識が低い、車にあまり乗らないドライバーはヘッドライトが点いているような感覚に陥り、ライトを点け忘れてしまう。夜でも明るい市街地であればなおさらその無灯火車が増える。自動車メーカーはこのことを想定できなかったんだろうか? 自発光でメーターの視認性を高めることと、ライト点け忘れで他車からの視認性を低くなることの、どちらが公共の安全に大きく関わるか?
■ライトを早めに点灯する運動「おもいやりライト運動」って知っている?
おもいやりライト運動という活動をご存じだろうか? 2011年頃から日産自動車のサポートと共に横浜で始まった運動で「ヘッドライトを早めに点灯して周囲に自車の存在をアピールしよう」というもの。実は筆者も何度か運営側のミーティングに参加したことがある。活動直後から横浜周辺の運送会社など自動車関連企業の多くが賛同し、横浜近辺ではライトを早めに点灯する車が確かに増えた。その後、全国の警察でも「早めのライト点灯」を呼びかける活動が広がっている。
「6年前に始めたボードプレイと僕たちが呼んでいる点灯誘導アクションが今年は長崎、鯖江、新潟に広がってうれしいです。黄色い『ライト点けてね』ボードを歩道からドライバーに見えるように示すだけのアクションです。地味ですが意外なことに、これが長崎大学のソーシャルアクション研究の実験素材になって学生さんが参加することになり、一気に雰囲気が変わりましたね。」(おもいやりライト運動プロデューサー山名清隆氏)
■オートライト義務化で無灯火車も減るか?
すでにご存じの方も多いと思うが、2020年4月以降の新型車にはオートライトが義務付けられる(継続生産車は2021年10月以降)。自動車の装備に関する新たな国際基準が採択されたことで車両保安基準等が一部改正されるのである。周囲の明るさが1000ルクス以下になると自動的にロービームを点/消灯させるもので、こちらも手動による解除ができないことが条件となっている。オートライトが義務化されれば、やがて無灯火車も減り、無灯火が原因で発生する交通事故も急速に減っていくことも期待できそうだ。
※情報は2017年12月21日時点のものです