SNSでは2019年から導入される「有給休暇取得の義務化」について話題になっています。そもそもどんな制度なのか、「裏技」なるものが本当に可能なのか、人事コンサルタントの小笠原隆夫さんにお話を聞いてみました。
2019年4月から施行になるこの有休取得の制度は、有給休暇が年10日以上付与される人に対し、5日以上消化することがすべての会社で義務付けられます。
社員全体の消化率が低い企業や、個別管理が煩雑な企業では「計画年休制度」による対応が勧められていますが、やり方については特に決まりはありません。なので、5日を下回りそうな人に個別で対応するといった方法も可能です。
小笠原さんによると、この制度自体は1987年からあるもので、労使協定に基づき、5日間の自由年休を除いて、企業側が与える日を指定できる制度なのだそうですが…
労使協定では具体的な付与日の設定、対象者、年休を持たない者や不足している者の扱い、手続き方法などを定めておく必要があり、会社が一方的に決めることはできません。
「GWや夏休みなどの長期休暇を有給休暇設定にして、労働者に消化させることでクリアできる」という裏技が気になるところです。
所定休日を有給付与日に振り替えることも、基本的には労働条件の不利益変更にあたるので、おこなうことはできません。もし有休に振り替えるならば、別の日を新たに所定休日にするなど、不利益にならない対応が必要です。
労使協定の届け出までは義務付けられていないので、これらの法規定をすべて無視して隠していれば、裏ワザといわれるような事態は考えられなくもないですが、表沙汰になった瞬間にアウトの明らかな法違反なので、よほどコンプライアンス意識が低い企業でない限り、そこまでするところはほとんどないのではないでしょうか。
そうはいっても、有給休暇は取りづらい、取れないという意見もあるようですが、「義務付け」はきちんと効力を発揮するのでしょうか。
ある調査(旅行サイト「エクスペディアジャパン」)では、「有給休暇の取得に罪悪感を持つ人」がアメリカ33%、フランス22%だったのに対し、日本は59%となっています。このような状況を考えれば、「年5日の義務付け」は、それなりに意味はあるのではないでしょうか。
働く人々が一方的に損をするような制度ではなさそうですが、制度をうまく利用し、しっかりと自分の意思で積極的に有給休暇を取得しようという意識も必要かもしれませんね。