多産の家庭でのDVの可能性について、SNSでは話題になっていますが、実際に産婦人科の現場では妊娠からDVを疑うことはあるのでしょうか。産婦人科医の清水なほみさんにお話をうかがってみました。
妊娠の回数や頻度などからDVを疑うことはあります。年齢的にまだ余裕があるのに前の妊娠から間をあけずに次々に妊娠していたり、4人以上の場合は、普段の避妊はどうしているのかを聞いたり、「あなたは何人子供が欲しいと思っていますか?」と確認することがあります。
上記ツイートによると「 4人目、5人目や、3人目でも毎年の妊娠、夫との子の中絶、妊娠分娩歴、家族背景や経済的背景などからも判断している」とのことですが、清水先生がDVを判断するときの目安は?
妊娠に関しては上記と同じですね。ご本人の言葉の端々に「自分では決められない」「私にはどうしようもない」「夫が○○したがる・〇〇してくれない」といったニュアンスの発言が見られる場合は、DVの可能性を考えながら診察していきます。
実際にあったケースでは、何度も繰り返し緊急避妊で受診される方で、話を聞いてみると「夫がコンドームを使ってくれない」という事情を抱えていた女性がいました。
不眠・動悸・鬱状態を「更年期のせいだと思う」と訴えてこられた方で、実際は夫による暴力的な性行為(相手が動けない状態なのに無理矢理行うなど)が発覚したこともあります。
DVを受けている人は「自分には価値がない」と刷り込まれていることが多く、相手が悪いのに「自分のせい」だと勘違いしてDVであること自体に「気づけなくなっている」ことも多々ある、と事態の深刻さを指摘している清水先生。
性的なDVだけでなく、「お前には価値がない」といった言葉を投げかけて自己効力感を奪ったり、生活費を十分に渡さずに経済的能力を奪ったり、言動を細かくチェックして自由感を奪ったりすることもすべて「対等ではない関係」です。
相手と一緒にいる時に「自分はなんて素晴らしい女性なんだ」と感じられなければ、すでに対等ではない関係になっている可能性があります。「なんとなく息苦しいな」とか「相手と一緒にいることが辛いな」と感じたら、まずは第3者に相談してみることをお勧めします。
妊娠出産はたとえ健康な女性であっても体に大きな負担となります。夫婦であっても同意のない性行為はDV。そんな性的関係だけでなくパートナーと「対等でないかも」と感じたら、DVを疑ったほうがよさそうです。