国内累計発行部数が1億2000万部以上という、驚異的な記録を打ち立てているスポーツマンガの金字塔『スラムダンク』。不良だった赤髪のバスケ初心者・桜木花道が、湘北高校バスケットボール部に入部し、強豪校のライバルらと対戦しながらメキメキと頭角を現していく物語に、多くのファンが魅了されたものです。
さて、そんな『スラムダンク』が連載終了したのが1996年ですが、その8年後である2004年、作者の井上雄彦先生によって、“最終回のその後”が描かれたことをご存知でしょうか? 『スラムダンク一億冊感謝記念・ファイナルイベント』にて、当時使われていなかったとある高校の黒板に、井上先生が描いたのは「あれから10日後-」。そう、人気キャラたちの最終回の10日後をショートストーリー化していたのです…!
今回は「あれから10日後-」のなかで描かれた、主人公・桜木花道の様子を紹介します。
■現実世界の田臥勇太選手の活躍にも触れるレアシーン…!
本編で最後に描かれた山王工業戦にて、背中を負傷してしまっていた花道。最終回ではリハビリ施設にてリハビリ中で、想い人である赤木晴子と文通している様子が描かれていましたよね。
「あれから10日後-」の花道は…完治して試合に復帰している…なんてことはなく、変わらずリハビリ中。
高校の教室にいる晴子が、「ハルコさんへ もう2学期がはじまってますね。この天才・桜木はすでにリハビリ王としてリハビリ界の頂点に――」という書き出しから始まる花道からの手紙を、くすっと微笑みながら読んでいます。
一方、晴子からの手紙をリハビリの休憩中に、湘南の海岸で読む花道の姿も描かれます。
「桜木君へ リハビリ王ってすごいね さすが桜木君って感じです リハビリ界っていう言葉もウケました」という書き出しで始まる手紙は、「桜木君もウズウズしてる? リハビリ王からリバウンド王に戻る姿を早く見たいです」という言葉で締められていました。
手紙を読み終えた花道に通りすがりの少年が、「あれ… その赤頭は湘北の10番 インターハイ見たよ」と声を掛けるんです。バスケ好きの地元の少年なんでしょう。花道のインターハイでの活躍が、地元の人々やバスケファンの間でちょっとした話題になっていることが伺えるシーン。
次に、花道のリハビリの担当医らしき女性が登場。花道にこう語りかけます。
「知ってる? 桜木君 日本人初のNBA選手がうまれたって」
「なぬ? アメリカ?」と聞き返す花道に、こう続けます。
「ほとんどの人が日本人にはムリって思ってたらしいわ だけど… ムリだっていうのはいつだって チャレンジしてない奴よね さあ桜木君も新たな段階のリハビリにチャレンジ!」
それに対して、花道の切り返しがかっこいい…!
「まー見てろって… 次に行くのは俺だ」
「天才ですから」
花道、NBAデビュー宣言! まだリハビリ中でありながら、花道節は健在です…!!
ちなみに、この女医さんが言っていた“日本人初のNBA選手”というのは、この「あれから10日後-」が描かれた少し前に、実際にフェニックス・サンズの選手としてNBAデビューを果たしていた、田臥勇太選手のことだと思われます。現実とリンクしたエピソードだったということですね。
――さて、ファンとしては、またコート上で活躍している花道を見たかったという気持ちもあったかもしれません。が、最終回から日数の経過をあえて10日のみにし、花道がリハビリに励んでいる姿を描写することが、ご都合主義を嫌う井上先生のこだわりだったのでしょう。