過労と死が直結しているのは、体全体の疲れではなく脳と心臓が関係しているという投稿が話題となっていますが「脳と心臓がやられる」とは具体的にどのような状態なのでしょうか? 医師の山本佳奈先生にお話をうかがいました。
「血管・心臓・脳がやられる」というのは、業務における過重な負荷が、脳血管疾患・心臓疾患を引き起こし死に至るという意味だと考えられます。
山本先生によると、長時間労働が、脳や心臓の疾患の要因であることを示唆する論文がいくつかあるそうです。
解析の結果、1日当たり3~4時間の残業をした労働者は、残業をしなかった労働者よりも冠性心疾患の罹患リスクが1.56倍高いことが示された論文があります。
この結果から、長時間労働が冠性心疾患の罹患リスクを高める要因となることが分かります。
労働時間が長くなるほど脳卒中の発症リスクが高くなることも分かっているのだとか。
メタ分析を行った結果、週労働時間が35~40時間の人と比べて、週労働時間が55時間以上の長時間労働者の冠動脈疾患と脳卒中の発症率が、それぞれ1.13倍と1.33倍に増加しています。
特に脳卒中は、週41-48時間労働の場合は1.10倍、週49-54時間労働の場合は1.27倍、週55時間労働の場合は1.33倍…とそれぞれ発症率の増加が認められています。
週55時間以上働く労働者は心房細動が起こりやすいことがわかった研究もあり、長時間労働が脳血管疾患や心臓疾の発症につながる研究結果が多数報告されています。
「脳・心臓疾患リスクの増加は労働時間以外の要因の影響も否定はできない」としながらも、長時間労働が仕事負荷の増加、疲労回復時間の減少と直結しているため、その影響は大きいと山本先生は考えているようです。