国内累計発行部数が1億2000万部以上という、驚異的な記録を打ち立てているスポーツマンガの金字塔『スラムダンク』。不良だった赤髪のバスケ初心者・桜木花道が、湘北高校バスケットボール部に入部し、強豪校のライバルらと対戦しながらメキメキと頭角を現していく物語に、多くのファンが魅了されたものです。
■意外とイケメンな小暮が不良・三井の魂を揺さぶっていた!
中学時代、神奈川県のMVPに選ばれるほど注目のバスケットボールプレーヤーだった三井寿。彼は中学3年時の神奈川県大会決勝戦で、湘北高校の安西先生に出会い、強豪高校からの誘いを蹴って湘北に入学したという経緯の持ち主です。
三井のチームは神奈川県大会決勝戦のラスト12秒、1点差で負けており、しかも相手ボールという劣勢の状況。三井自身も内心「もう勝てない」と思っていたところ、来賓席に来ていた安西先生から、あの有名な言葉を掛けられるんですよね。
「最後まで… 希望を捨てちゃいかん」
「あきらめたらそこで試合終了だよ」
この言葉を聞いて奮起した三井は、奇跡の逆転劇を演じ見事優勝! MVPに選ばれたのでした。
しかし、三井は湘北高校に入学して間もなく、練習中に膝を負傷してしまい入院。さらにライバル視していた同学年のゴリこと赤木剛憲が、周囲からの評価を高めていることに焦りと嫉妬を感じ、ムリして早期練習復帰したことが災いして、膝の状態を悪化させてしまうのでした…。
その後、バスケ部に自分の居場所がなくなってしまったかのように感じた三井は、膝のケガが完治してもバスケ部に復帰せず、グレまくり。2年後、3年生となった三井は不良仲間を引き連れてバスケ部を潰しに来るのでした。
そんなバスケ部の面々と三井率いる不良軍団が暴力沙汰を起こしている現場に、安西先生が登場。安西先生の顔を見るやいなや、三井は気持ちの奥底に押し込んでいたバスケへの情熱が沸きあがり、
「安西先生…!! バスケがしたいです……」
と、崩れ落ちながら号泣…!このシーンにもらい泣きする人が続出したものです。
――さて、ここで注目したいのが、この一連の事件における“影のMVP”です。
このシーンでのMVPはもちろん、「あきらめたらそこで試合終了だよ」と中学時代の三井に言葉をかけており、三井から「バスケがしたいです……」の言葉を引き出した安西先生。
しかし、三井が安西先生の顔を見た瞬間に、「バスケがしたいです……」と思わず吐露してしまったのは、実はメガネ君こと木暮公延のファインプレー(胸熱なセリフの数々)があってこそ…!
まず木暮は、三井率いる不良軍団が体育館で暴れているさなか、三井から「どいてろぉ!!」と殴られてメガネを吹っ飛ばされながらも、毅然とした態度とキリッとしたシリアス顔で、
「大人になれよ…三井…!!」
と、三井を睨みつけます。
ここで読者は、メガネを取ったメガネ君が意外とイケメンだったこと、三井と小暮が知り合いだったことを知るのです。
そして、小暮が事情を知らない花道らに、三井がバスケ部を辞めてグレるまでの過程を語るんですよね。
その後、
「バスケなんて単なるクラブ活動じゃねーか!! つまんなくなったからやめたんだ!! それが悪いか!!」
とブチ切れる三井の胸ぐらを掴んだ小暮が、
「何が全国制覇だ……… 何が日本一だ!! 何が湘北を強くしてやるだ!! お前は根性なしだ……三井……ただの根性なしじゃねーか 根性なしのくせに何が全国制覇だ…」
とまくしたて、最後に三井にバシッとこう言いのけるんです。
「夢見させるようなことを言うな!!」
いつも温厚で弱気なイメージさえあった小暮が見せた漢気たるや…!!!!
この直後、安西先生が登場し、安西先生の顔を見た三井は「バスケがしたいです……」と号泣。
はい、こうやって改めて振り返ってみると、安西先生は最後の最後にオイシイとこだけを持っていった感は否めません(笑)。
むしろ、小暮の「大人になれよ… 三井…!!」、「夢見させるようなことを言うな!!」などの言葉によって、三井は再びバスケへの想いを取り戻したとも読み解けますよね。
安西先生の登場がきっかけで、コップの中の水が溢れ出すように三井の本音が出たことは間違いないですが、そのコップの中の水を満杯近くまで貯めに貯めたのはおそらく小暮…!! 三井バスケ部復帰までの一連の事件において、小暮が“影のMVP”と言えるのではないでしょうか。
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