■デビューアルバムの表題曲『十七歳の地図』
尾崎さんは1983年、ファーストシングル『15の夜』とファーストアルバム『十七歳の地図』を同時発売しデビュー。当時の尾崎さんは高校在学中の18歳で、広く知られる名曲『15の夜』がこの時点で完成されていたことにまず驚きですが、『十七歳の地図』にも注目です。
『十七歳の地図』はアルバムの表題曲でもあり、このアルバムに収録された楽曲群を捉えるヒントにもなる一曲。現実に落胆し、学校や社会から逃避しながらも、生きる希望を見出していく過程が描かれています。
まさに“十七歳”らしい等身大の葛藤を歌うと同時に、力強い言葉で自他を奮い立たせる尾崎さんが、デビュー後まもなく若者たちから絶大な支持を集めたことは、想像に難くないですね。
■変わりゆく仲間への友情を歌った『Scrap Alley』
一躍少年・少女らの憧れの存在となった尾崎さんは1985年、2枚目のアルバム『回帰線』を発売。そのなかに収録された『Scrap Alley』は、尾崎さんが昔から一緒にやんちゃしていた仲間に向けて歌った曲だといわれています。
笑える失敗もカッコつけていた日々もすでに過去のことで、今では父親になった友人は、愛の暮らしのなかで幸せそうな様子。それを見て少し寂しさを感じながらも、“あの日より幸せになってくれ”と歌っています。
青春時代の仲間が大人になるにつれて変わっていく寂しさは、誰もが経験することです。万人に共通する出来事だからこそ、『Scrap Alley』に描かれた深い友情には、はっとさせられることがあります。
■ファンの間で根強い人気を誇る『ダンスホール』
『ダンスホール』はファンの間で“初期の名曲”との呼び声が高く、根強い人気を誇っています。なんでも尾崎さんは、オーディションでこの曲を披露して合格したのだとか。つまり、尾崎さんがプロのミュージシャンとしてスタートを切る足がかりになった曲なのです。
そんな『ダンスホール』は、一貫してひとりの女の子について歌った曲。幼さを残しながらも気取って見せる彼女は、2番に入ると、自分の過去のことを語り始めます。グレて学校を辞めたこと、今は働いていることなどを話す彼女の切なげな様子が、尾崎さんの言葉によってありありと浮かんでくるのです。
尾崎さんは自分の胸の内を表現することはもちろん、誰かの心を、その仕草や風景から描くことにも長けていたのでしょう。
――普遍的な人間の心を歌う尾崎さんの歌は、現代でも輝きを失うことなく、私たちの心を撃ちます。尾崎さんの歌に触れるのが久しぶりな方も、初めての方も、これを機にぜひ聴いてみてください。何かに気づかされる、いいきっかけになるかもしれません。