過酷な戦争と人類の進歩や苦悩を描いたアニメ『機動戦士ガンダム』。一年戦争終結までのアムロの戦いを主軸に描いた本作だが、なかには本筋から脱線気味な珍展開の回も多い。今回はそんなレアエピソードをフィーチャーした。
■第14話『時間よ、とまれ』:生身でガンダムに挑んだ生身のジオン兵との攻防
まずは、第14話から。地球圏を航行するホワイトベースに対し、慣れない地球での任務に辟易していた若手のジオン兵たちが戦いを挑んだ回だ。ジオン兵は手柄を立てるために生身でガンダムに接近して爆弾を仕掛けるという驚愕の作戦に乗り出すのだが…というのがあらすじ。
唯一、総監督の富野由悠季氏が脚本としてクレジットされているこの回。地球で生活するジオン兵との生身の戦闘を介して、アムロと視聴者により“戦争”を意識させる展開や、時限爆弾解除をめぐる緊迫の演出が見ものとなったエピソードである。
しかし、作画がかなり乱れている回でもあり、無数に仕掛けられた爆弾をアムロたちが解除しようとするカットでは、本来18mほどのはずのガンダムが100mくらいあるように見えてしまうなど、ビジュアル面では悩ましい部分が多かった。
■第15話『ククルス・ドアンの島』:衝撃の“ほっそりザクⅡ”登場の伝説回
次は、第15話『ククルス・ドアンの島』。衝撃の作画と展開を見せた前回の熱が冷めやらぬまま、なんとその次も珍エピソードが放り込まれた。この回はガンダムファンの間でも名高く、シリーズの珍エピソードを語るときには欠かせないと評判なのだ。
味方からの救難信号を拾ったアムロは、コアファイターでとある孤島へ偵察に。そこには負傷した連邦兵たち、アムロに敵意を向ける子どもたちと女性、そして彼らの面倒を見るドアンという男がいた。実はこのドアン、ジオンの脱走兵であり、おそらく子どもたちの両親を戦争で殺めたことに心を痛めている男だということがわかってくる。
ドアンを通して、戦争の悲劇と、それでも善意を忘れんとする気概を描き、「ザクⅡ」vs「ザクⅡ」のステゴロファイトなどもある名エピソードなのだが、先と同様その作画崩壊ぶりが悪い意味で有名でもあるのだ。上半身と下半身が分離した珍妙な「ガンダム」、ドアンの乗る超細身の「ザクⅡ」、顔面が伸びた「ガンダム」など、絶句してしまう作画は一見の価値ありかもしれない…。
■第18話『灼熱のアッザム・リーダー』:ジオンの珍兵器&やさぐれて暴れるガンダム
最後は、第18話『灼熱のアッザム・リーダー』を紹介しよう。相次ぐ戦闘で、もともと戦闘員でなかったアムロは、第17話であろうことかガンダムとともに脱走を図ってしまう。そしてこの回では、やさぐれて缶詰を貪るアムロの上空を、見慣れない珍妙な巨大物体が通り過ぎていく…。
それこそ、ジオン驚異のメカニズムを体現する浮遊砲台「アッザム」だった。紫色の巨大な玉ねぎに4本足が生えたようなビジュアルと、これまでストーリーに出てこなかった巨大兵器の登場は、当時のファンに大きなインパクトを与えたことだろう。
加えてこの回は、フラウに“自分を認めさせる自信がない”というようなことを言われ図星を突かれたアムロが、単身「アッザム」のテストが行われていたジオンの平凡な鉱山施設に殴り込みをかけ、これでもかと破壊してまわる衝撃シーンまであるのである。