今年公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。総監督の庵野秀明氏は、「特撮博物館」という企画展で館長を務めるほどの特撮ファンとしても有名だ。そこで今回は『エヴァ』にこめられている、特撮作品へのオマージュ描写を紹介していく。
■意外なところに潜む『ゴジラ』シリーズオマージュ
1954年に公開された『ゴジラ』は、日本初の怪獣映画であり、着ぐるみに人間が入って演技をするという、日本の特撮作品で主流となる手法のパイオニア的な作品だ。エヴァではそんな『ゴジラ』から連なる『ゴジラ』シリーズへのオマージュが散見される。
そのなかでも代表的なものが、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第7話登場の兵器「ジェット・アローン」だ。これは『ゴジラ』シリーズ第13作『ゴジラ対メガロ』に登場したロボット「ジェットジャガー」と、その前身にあたる怪獣「レッドアローン」から名前が取られ、デザインもジェットジャガーの口部のような意匠が施されている。
意外なところでは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』での葛城ミサトの電話の着信音がそうだ。これは、『ウルトラマン』に登場する組織「科学特捜隊」の本部の着信音なのだが、元を辿ると『ゴジラ』シリーズに登場した宇宙超怪獣「キングギドラ」の鳴き声の流用なのだ。
■あっちにもこっちにも『ウルトラマン』要素
『エヴァ』と特撮作品の関係では、『ウルトラマン』シリーズを外して語ることはできない。先述の特撮博物館のキャッチコピーで「エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。」と掲げられていたように、『ウルトラマン』シリーズは『エヴァ』と深く関係している。
特に庵野が自主制作映画のタイトルに使用した『帰ってきたウルトラマン』への愛は深い。例えば、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』でミサトが運転していたNERV官用車は、『帰ってきたウルトラマン』に登場した車「マットビハイクル」と同じベース車で、カラーリングも白地に赤いラインが入っていると、同車を意識したものになっている。
また、ミサトの回想に登場した4体の巨人の意匠に、『帰ってきたウルトラマン』までに登場した4人のウルトラマンのデザインが組み込まれているなど、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』自体が全体的に『ウルトラマン』シリーズへのオマージュが豊富な映画だった。
■『シン・ゴジラ』でエヴァの要素を逆輸入?
逆に、庵野が総監督と脚本を務めた特撮映画『シン・ゴジラ』では、『エヴァ』に対するセルフオマージュが見受けられた。
わかりやすいのはBGMで、『エヴァ』と同じく鷺巣詩郎氏を起用し、『エヴァ』の音楽を要所で使用していた。また、『シン・ゴジラ』終盤で決行された「ヤシオリ作戦」は、『エヴァ』の「ヤシマ作戦」と同じく日本の古事にその作戦名、および作戦内容を由来としているため、これもセルフオマージュのひとつと言えるかもしれない。
庵野は2021年に公開を予定している映画『シン・ウルトラマン』で企画・脚本としての参加を予定している。『エヴァ』ファンとしては、庵野が『エヴァ』の要素をどのようにして『ウルトラマン』に逆輸入するのかについて考えを巡らせるのも面白いのではないだろうか。