エイジングケア専門の医師をしているHさん。実は彼女、あるダイエットによって命を落としかけたことがある!1970年、産婦人科医の父と代々医者家系の母の間に生まれたHさん。小4にして、155cm・50kgとがっしり体形の女の子に育った。
そして、小学校6年生の時に転機が。なんと勉強のため、おじとおばが暮らすアメリカで3か月暮らす事になったのだ。すると、2つのカルチャーショックが。1つは、食べ物がとんでもなくデカいこと!そして、もう1つは......食べている人も結構デカいことだった!!
そんな環境に......彼女の胃袋も馴染んでしまった!そして日本に帰ってからも、その胃袋は変わらなかった。こうして彼女は食べまくり......中3で体重は57kgに!そんな姿を見た弟から「太った」と言われ、彼女は重大なことに気づいてゆく!アメリカでは普通のサイズだが、日本じゃ自分はデブ......。このままではいけない......こうして彼女のダイエット人生が幕を開けた!
■様々な◯◯だけダイエットに挑戦
まずやったのは、当時大流行していたリンゴだけダイエット!食事はリンゴのみ!その結果......ダイエットは成功。
だったが......超過酷なダイエットを乗り越えた自分へのご褒美に美味しいものに手を出した!だが、これにより......前よりさらに激しい食欲が。すると......見事にリバウンド!で、考えたのが1日3食大好きなチョコ菓子だけダイエット!かなり不健康だが、体重は落ちた。でも、お菓子には代謝を下げる成分が入っているものもあり、下半身がむくんでしまった。
そこで当時大流行していた、ラップグルグル巻き部分痩せダイエットを敢行!そして、ドライヤーで熱を加えて発汗効率アップ!しかしまたもリバウンド!その後も彼女は、体重が増える度に色んな◯◯だけダイエットに挑戦し、体重の浮き沈みを繰り返しながら同じくらい勉強も頑張り......念願だった医学部へ進学!
そこで、運命の出会いが。それは同じ医学部の2年先輩......すぐに2人は恋に落ちた。その後、大学を卒業し彼女は眼科医に。そして29歳のとき、彼のアメリカ留学を機に結婚!でも......アメリカと言えば彼女の胃袋が最初に開放された国......。で、すぐに......胃袋がアメリカナイズされてしまった!
結婚で安心してしまったのか......彼女はアメリカ留学2年間で体重は17キロも増量!!しかし日本に帰ると、周りの女性は細い......そこで数年ぶりにダイエットを決意。さっそく調べると2003年当時、アメリカで流行していたあるダイエットを発見!それが......糖質制限ダイエットだった。
■お肉食べ放題で減量成功!?
人が活動するためのエネルギーとなる栄養素のひとつである炭水化物を制限し、その分、脂質やタンパク質で補うという食事法。彼女にとって魅力的だったのは......ご飯や麺などを抜く代わりに、肉などのタンパク質や脂質は積極的にとっていいという事。つまり、大好きなお肉、食べ放題ダイエットだと思った。
でも、どうして、肉だけだと太りづらいのか?実は炭水化物の一部、糖質は、摂取するとタンパク質や脂質に比べ血糖値が急激に上がる。すると、それを抑えるインスリンが多く分泌される。インスリンは血中の糖を脂肪細胞に取り込む働きがあるため、多く分泌されると多くの糖を脂肪に変えてしまう。つまり、炭水化物を抜くと、インスリンの分泌を抑えられるので脂肪を減らせると考えられている。
さらに、糖質の摂取量が減ると、体内では蓄積されている中性脂肪や体脂肪を分解しエネルギー源を作り出すため、体脂肪も減少していくと考えられている。この2つの効果で、3か月で体重は14キロも落ちた!すると......周囲からは「痩せました?」という声が!炭水化物を食べないだけで満腹になるので、ストレスはなくしかも効果てき面!!
厚生労働省が発表している炭水化物の摂取基準値は50%から65%だが、この時の彼女はわずか5%まで制限していた。そんな生活を3年ほど続け、身体に異変が起きていく......。最初は......自分の体からツーンと酸っぱい臭いがするようになった。彼女の体臭がきつくなっていたのだ。
この体臭の正体は「ケトン体」と呼ばれる物質。実は、糖質が足りないので、エネルギーを得るため脂肪を分解する作業をすると、血液中に放出されるのがケトン体。これが酸っぱい臭いの原因となり体臭や口臭がキツくなってしまう。さらに、顔にも変化が......ほうれい線がくっきり出始め顔が老けたように感じた。
実は過剰な肉の摂取は、その分解の過程で発がん性物質を発生させ、腸内で悪玉菌を増やしてしまうことも。それが老化と深い関わりがあるとされている。やがて......頭がボンヤリすることが多くなった。極端に糖質を制限すると脳の働きが低下すると言われている。彼女もこうした諸症状に気づいていたものの、痩せていることへの満足とリバウンドの恐怖から無視していた。
■無理な減量で一過性脳虚血発作に
そしてある朝、ついに恐ろしいことが! 目が覚めるとなぜか、右腕と右足に力が全く入らない...一体、自分の体に何が!? しばらくして......少し体が動くようになりタクシーで病院へ。MRI検査を受けると......一過性脳虚血発作と診断された。一過性脳虚血発作とは脳内の血液の流れが一時的に悪くなり起こる病気。脳梗塞の前兆とも言われる。
検査をすると......中性脂肪の数値が基準値を超えていた。彼女の場合、肉など脂質を取り過ぎたため、脂質異常を起こし血液がドロドロに。その結果、脳に酸素が送れず、一過性脳虚血発作を起こしたと考えられた。
実は現在、糖質制限に関して専門家の中でも賛否があり、糖質を制限すると、死亡率が高くなると発表した論文もある。その後、彼女は脂質を抑え炭水化物を摂取する食生活に戻した。すると、2か月で17キロもリバウンドしたという。
それから13年。広尾にある、彼女が統括院長を務めるクリニックを訪ねた。そこには......すっかり痩せたHさんがいた。彼女は、毎日の生活習慣を見直すことで、痩せる習慣を身につけたのだという。ポイントは、3食の量を減らしその分をナッツなどの間食で補い空腹状態を減らすこと。
血糖値は糖質を摂取したり、長時間空腹が続いた状態になると上昇しやすい。そのため、3食の糖質を減らし、間食で補うことで血糖値が上がりにくい痩せ習慣が身につくのだという。逆に食前に運動をすると血糖値が下がった状態で食事をとることになり急激な血糖値の上昇につながってしまう。何事もやりすぎには注意です。(2019年8月27日 ON AIR)