あなたは“ぽん酢”と聞いて、何色の調味料を想像するだろうか? 多くの方はミツカンが販売している「味ぽん」のような、黒い液色を思い浮かべるかもしれない。しかし、実は「味ぽん」は厳密には“ぽん酢”ではないのだそうだ。
■「味ぽん」は“ぽん酢”じゃない? “ぽん酢”の意外な事実
“ぽん酢”は本来、果汁や果汁に酢を加えた調味料を指す言葉で、柑橘系の果汁を意味するオランダ語の“pons(ポンス)”が語源とされている。
一方、ミツカンの「味ぽん」のように液色が黒い商品は、“ぽん酢”にさらに醤油やダシなどを入れている“味つけぽん酢”に分類される。つまり、「味ぽん」は広義には“ぽん酢”の一種ではあるが、厳密には“味つけぽん酢”と呼ばれる商品なのだ。
しかしながら、現在の“味つけぽん酢”の認知度は非常に高く、実際日本国内での“ぽん酢”の消費量は“味つけぽん酢”が占める割合が圧倒的に多いのだという。すなわち、一般名詞としての“ぽん酢”は“味つけぽん酢”のことを指していると言っても過言ではないのである。
■すべては博多の水炊きから始まった! 「味ぽん」誕生秘話
“味つけぽん酢”の代表的な存在である「味ぽん」が誕生したきっかけは、当時のミツカンの社長である7代目中埜又左工門が取引先との宴会で訪れた料亭で食べた、博多水炊きのぽん酢に感銘を受けたからだと言われている。
料亭のぽん酢や水炊きの味を広めたいという熱意のもとに開発が進められた「味ぽん」は、1964年11月10日に「ミツカン ぽん酢<味つけ>」として関西で試験的に販売を開始。約3年後の1967年秋には「ミツカン 味ぽん酢」の名称で全国発売された。
■築地市場で屋台を開いた!? 地道な「味ぽん」のPR作戦
全国的に販売されるようになった「味ぽん」だったが、関東において水炊きは馴染みが薄く、なかなか売上を伸ばすことができなかったという。
そこで当時の関東のミツカン営業担当者は、早朝の東京・築地の卸売市場で屋台を開き、「味ぽん」で作った水炊きを振る舞うという地道なプロモーション活動を敢行。鍋用調味料としての知名度を広げることに成功した。
1979年にはラベルが現在の「味ぽん」となり、1980年代からはおろし焼肉やぶりの塩焼きなど、鍋料理以外の活用方法のアピールを開始。そうした努力の甲斐もあって、初登場から55年以上の時を経た今でも、さんまの塩焼きや炒め料理、煮料理などさまざまな料理で活躍しているのだ。