晩酌はビール派のあなたへ『キリン一番搾り生ビール』開発裏話

コラム

citrus 二階堂銀河

 

定番のビールブランド『キリン一番搾り生ビール』。麒麟のマークに金の色味が強調されたパッケージは身近な存在ですよね。今回は、そんな『キリン一番搾り生ビール』の開発背景と、その後歩んだリニューアルの歴史をご紹介します。

 

■多様化する価値観、顧客ニーズに応えるためにコストぎりぎりでの勝負に

『キリン一番搾り生ビール』の開発が始まったのは1980年代後半。当時は、高度経済成長期が終わり、安定成長期と言える時期にありました。高い生活水準が実現するとともに、人々の趣味嗜好も多様化した時代。そういった背景のなか、お客様のニーズに応えるビール作りが始まったというわけです。

 

しかしそう簡単な道のりではなく、様々な試行錯誤をするもなかなかヒット商品は出ませんでした。「従来の方法ではもはやうまくいかないのか……」という危機意識を抱くなか、キリンは「キリンのイメージに沿った最上級の生ビール」というコンセプトを改めて挙げて商品開発に挑みます。そこで生まれた発想が、「一番搾りの麦汁のみを使ったビール」というものでした。

それまでのビールは、一番搾りの麦汁と二番搾りの麦汁をブレンドして作られることが一般的でした。一番搾りの麦汁はタンニンが少なく、上品な味わいをもたらします。とはいえ、一番搾りのみを使い続けることはコスト的に難しいという課題が。しかし、「良いものを安く提供する」という信念のもと、キリンはプレミアム商品にはせずに通常のビールと同じ価格での販売を決断したのです。

 

 

■1990年、発売開始!! その後、度重なるリニューアルで守り続けたブランド力

こうした経緯を経て、1990年3月、売りとコンセプトを「一番搾り」というネーミングではっきりと示した自信作として、『キリン一番搾り生ビール』は発売されました。パッケージも色調にこだわり高級感を演出したこの商品は、見事に市場のニーズとマッチし、大ヒットを記録!!

 

しかし、1990年代なかごろになると市場に大きな変化が現れます。それは“安くてそこそこ美味い”発泡酒の台頭でした。「平日は発泡酒、週末にはビール」という新たな概念が生まれ、こだわり抜いたビールを常飲するイメージは古いものになっていきました。そこでキリンの開発班は、ビールとしての価値をさらに高めることを目指し、デザインを一新。発泡酒との棲み分けを意識し、あえて高級感を醸し出すパッケージを打ち出したのです。

 

そして、発売20年目を迎える2009年に、『キリン一番搾り生ビール』は副原料を用いることをやめ、麦芽100%のビールへの改良に成功しました。「麦芽100%」の文字と「しずくマーク」をラベルにプリントし、「一番搾り」のイメージをさらに高めた商品に生まれ変わったのです。その後、2010年にはビールの本場ドイツに進出するなど躍進を続けた『キリン一番搾り生ビール』。現在、世界各地で愛されるようになった背景には、こうした試行錯誤の歴史があったのです。