※注意※
本コラムは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のネタバレがあります。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をすでに鑑賞済であることを前提に執筆しておりますので、未見で作品の内容を知りたくないという方は読まないでください。
3月8日に公開され大ヒットとなった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。本コラムでは“ネタバレあり”で考察させていただきますので、未見の方はご注意ください。今回はラストシーンでシンジの声優があの俳優に変わっていた理由を考察します。
■理由はシンジ役の声優のコメントを見れば納得?
※注意※
ここからはネタバレが含まれます。
『シン・エヴァ』のラストシーンでは、主人公 碇シンジが成長して青年になった姿が描かれています。そして、その青年シンジを演じたのは、これまで25年間、碇シンジ役を担ってきた声優・緒方恵美さんではなく、なんと俳優の神木隆之介さんだったのです。
それまで神木さんは『エヴァ』シリーズに接点という接点はありませんでしたし、何より長年シンジを演じてきたのは緒方さんなのですから、最後まで緒方さんに演じてもらうというのが自然な流れだったように感じます。
青年になったと言っても、シンジのビジュアルはそこまで大きく変化したわけではないので、プロフェッショナルな声優である緒方さんであれば演じられたはず。
ではナゼ神木さんに交代しなくてはいけなかったのか? また、声優を専業でやられている方ではなく、ナゼ基本は俳優として活動している神木さんに白羽の矢が立ったのか?
それは、『シン・エヴァ』パンフレットの緒方さんのインタビューから推察することができました。
緒方さんのインタビューによると、第2部『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の最後のシーンを収録した際、庵野秀明総監督から「お前がずっと14歳の心を手放さないでいてくれたから、なんとかなった」と声を掛けられ、とても感激したんだそうです。
また、5Pにも及ぶそのインタビューは、緒方さんの次のコメントで締められていました。
「いつかまた『完結編のその先を、とか、アナザーワールドをやるけれど、まだ14歳やれる?』と聞かれたときには『やりますよ』と迷わず言える私でありたい。死ぬまで、14歳の心を演じられる役者で居続けられたらいいなと思っています。」
そう、庵野総監督は緒方さんが14歳の少年の心を持ち続けてくれたから『エヴァ』シリーズが成立したと考えており、そして緒方さん自身も14歳のシンジを演じ続けることを矜持としているのです。
緒方さんも庵野総監督も“14歳のシンジ”を非常に重要視し、とても大切にしていることが伝わってきますよね。
とは言え庵野総監督としては、『エヴァ』という作品を完結させるには、シンジを成長させる必要性も感じていたのでしょう。
ですから庵野総監督は、緒方さんにはこれからも“14歳のシンジ”の心を持ち続けてほしいと考え、あえて青年シンジを緒方さん以外に演じてもらったのでは……と思うのです。
ちなみに、緒方さんの同業者(専業の声優)に青年シンジを任せるのは違うと考え、本職は俳優ながら声優経験も豊富な神木さんが起用されたのではないでしょうか。
――超重要なラストシーンを、25年間シンジ役を務めてくれた緒方さんに演じさせなかったのは、庵野総監督の緒方さんへのリスペクトと、庵野総監督なりの優しさからだったのかもしれませんね。