2020年10月にアニメ化した『週刊少年ジャンプ』の人気バトルマンガ『呪術廻戦』。五条悟の親友だった夏油傑は、なぜ選民思想を持つようになり、五条までも敵に回してしまったのでしょうか。夏油の秘められた過去と心の葛藤を振り返っていきます。
■夏油は当初、非術師を守るための術師であろうとしていた
五条悟（ごじょうさとる）と夏油傑（げとうすぐる）は、呪術師を育成する呪術高等専門学校在学時の同級生で親友。2人とも、高専生でありながらすでに敵なしの強さを誇っていました。
もともとは「呪術は非術師（呪術を使えない、呪霊が見えない人）を守るためにある」といった考えのもと術師として呪霊を祓っていた夏油でしたが、その信念はとある少女護衛の任務についてから徐々に揺らいでいきます。
■護衛任務失敗で少女は死亡…夏油の目に焼き付いた衆愚の醜い姿
呪術界、延いては人間界の平和のために必要な存在である少女・天内理子（あまないりこ）。彼女の命を狙う宗教団体・盤星教は、禪院甚爾（ぜんいんとうじ）に暗殺を依頼します。五条と夏油は辛くも甚爾を撃破するものの、甚爾の魔の手を防ぐことはできず天内を死なせてしまいました。そして、非術師で無知がゆえに天内の死を無垢に喜び讃える盤星教信者衆の姿を見て、夏油の心には大きな影が……。
それから1年の時が経って、五条も夏油も呪術界にわずか数人しか存在しない特級術師に昇格。しかし、術師として人々を救うことに意味はあるのか、その疑念は次第に強まり、夏油を苦しめていました。
そんな折、夏油は同じ特級術師である九十九由基（つくもゆき）に出会い、九十九がそもそも呪霊の生まれない世界を構築しようとしていることを知ります。そのときに夏油の頭に浮かんだ考えは「非術師を皆殺しにすれば呪霊は生まれないんじゃないか」というもの。ついに危険な思想にまで及んだ夏油に、ある日決定的な事件が……。
■心に影を落とした夏油は、やがて答えを出して呪術界を去る
ある村落内で起きた神隠しと変死事件の原因と思しき呪霊排除の任務に就いた夏油。しかし村落に着くと……呪力を持った幼い少女2人が、なんと非術師である村民によって濡れ衣を着せられ、痛めつけられていたのです。その現場を目の当たりにして吹っ切れた夏油は、少女2人を救い出したあとに非術師の全村民112人を殺害。そして呪術界を後にします。
処刑対象となった夏油は逃亡を続けますが、事実を知り憤慨した五条とある日再会します。五条は道を正そうとしますが、夏油は意に介さず「生き方は決めた 後は自分にできることを精一杯やるさ」と五条のもとを去ります。五条はその場で夏油を止めることも仕留めることもできず――およそ10年後、夏油は「百鬼夜行」を遂行すべく五条の敵となって再び目の前に表れるのでした。