2016年に連載を開始した大ヒットシリーズ『鬼滅の刃』。その個性豊かなキャラクターについて語られる機会も多いですよね。今回は、そのなかでもとりわけファン人気が高いキャラ、我妻善逸の魅力を解剖していきます。
■ネガティブな感情も隠さない素直さ
善逸は「いつ死ぬかわからないんだ俺は!! 」と道端で女性に泣きついているシーンで、本格的な初登場を飾ります。女性に騙されて多額の借金を背負い、不本意ながら鬼殺隊の剣士になったという善逸は、とてもビビリな性格。戦いに向かう主人公・竈門炭治郎を泣きながら引き止めたり、炭治郎とはぐれた際には「死ぬ死ぬ死ぬ、死んでしまうぞ これは死ぬ!!」と喚いたりと、とにかく頼りない姿を見せるのです。
しかし、炭治郎は正義感が強く、人のために自分を犠牲にするのも厭わない優等生タイプ。また、行動を共にすることも多い嘴平伊之助も、相手がどんな強い鬼であろうと構わず突っ込んでいく怖いもの知らず。この二人の性格は良くも悪くもファンタジーすぎるため、読者はなかなか自分と重ね合わせて見られないのかもしれません。
そんななかで善逸は、次の戦いを想像してビビったり、泣いたり……ととても人間らしい弱い姿を見せてくれます。彼のネガティブな感情も隠さない素直さは、多くの人に愛される秘訣のひとつではないでしょうか。
■頼りない普段の姿と、戦闘時のギャップ
先述の通り、善逸は基本的にビビリな性格。ですが、緊張や恐怖のあまり失神同然に眠り落ちると、潜在する力を発揮させて戦うことができます。雷の呼吸の使い手である善逸が戦闘時に使うのは、「霹靂一閃(へきれきいっせん)」と呼ばれる技。
この、「霹靂一閃」は、雷光が駆け抜けるように相手の間合いに入り、高速で斬りつけるという抜刀術。「霹靂一閃」を繰り出す善逸は、鬼からも“先程までとは別人のように冴えた動作”と評されるほどの俊敏な動きを見せます。体を低く構えて踏み込むフォームも、かっこいいんですよね。
もちろん、戦闘中の善逸はいつも失神状態にあるので、本人は自分が秘めている強さには気づいておらず、目覚めてから自分が斬った鬼の頭を見て「ギャーッ 死んでる」と仰天していたりします。そのヘタレと強さのギャップもあり、善逸は見ている人を退屈させません。
■意外と情に厚いという一面も
善逸には情に厚い一面もあります。その性質が現れたのが、鼓屋敷での一幕でしょう。善逸と炭治郎は鼓屋敷での戦いの直前に落ち合い、行動を共にすることになります。鼓屋敷に足を踏み入れる前、炭治郎は鬼になった妹・禰豆子が入った箱を屋敷の外に置き“俺の命より大切なもの”と何気なく言いました。
それを聞いていた善逸は、鬼の気配を感じて攻撃しようとした伊之助から箱を守ります。このとき、音を敏感に感じ取る善逸も、箱の中に鬼が入っていることを察していました。それでも、必ず自分の納得できる事情があるはずだと炭治郎を信じ、伊之助から攻撃を受けても応戦せずに耐え続けたのです。こんな善逸の優しさや仲間を思う等身大の姿勢も、多くの人を虜にしているのでしょう。