1994年に連載を開始し、2021年10月には第100巻が発売され、全世界累計発行部数が2.5億冊を突破している『名探偵コナン』。今回は数あるエピソードのなかでも、“歴代屈指のトラウマ回”と名高い「図書館殺人事件」について紹介していきたい。
■そもそも「図書館殺人事件」とは?
「図書館殺人事件」とは、原作漫画では10巻に収録されており、テレビアニメは1997年3月3日(第50話)に放送されたエピソード。主人公である江戸川コナンが、少年探偵団のメンバーである歩美、元太、光彦と、図書館の児童書コーナーで読書感想文用の本を探すシーンから物語は始まる。
図書館にパトカーがやってきたことで、コナンたちはこの図書館の職員の一人が行方不明であることを知る。警察が図書館に不審な点はないと見て撤収するも、コナンは図書館内が怪しいと睨みトイレ内で閉館を待つことに。
閉館後にこの図書館の館長である津川が犯人であることを知ったコナンたちは、津川館長が帰ったのを見計らって死体探しを開始。ところが図書館の電気を付けてしまい、それを帰宅しようとしていた津川館長に目撃されてしまう。すると、津川館長は睨みつけるような目で図書館に戻ってくるのだ……。
■津川館長の裏の顔がとにかく怖い
このエピソードが怖い最大の理由は、犯人である津川館長の表の顔と裏の顔のギャップがとにかく激しいことにあるだろう。冒頭ではコナンに対して優しい笑顔で対応するなど、子ども好きな図書館員という印象が強かった。しかし裏の顔はとても冷徹で、その表情が頭から離れずにトラウマだったという人も多いはず。
津川館長の“その表情”が最初に登場したのは、先述した図書館の電気が付いたのを発見したシーン。自分が犯人だとバレたのではないかという不安と、今すぐ口封じをすれば間に合うのではないかという思惑が入り混じったような表情は、見る者の心を戦慄させただろう。
その後も津川館長のトラウマ級の顔は頻出するが、最も怖いのはエレベーターのシーン。死体を発見したコナンは、エレベーターを背にしながら意気揚々と推理を披露する。するとコナンの後ろを指差しながら怯える少年探偵団の仲間たち。振り返るとそこにはエレベーターで上がってきた津川館長が立っており、凍るような視線でコナンを見下ろしていたのだ……。
■アニメ版が特に怖さが増強している理由
「図書館殺人事件」は、原作漫画からアニメ化されるにあたって大きく変更された点はない。しかしアニメ版では怖さがぐっと引き上がっており、その理由はこのエピソードが1話完結となっていることにあるだろう。
コナンのアニメはひとつのエピソードを前後編に分けることは珍しくない。しかしこのエピソードは1話完結。事件発生から解決までが一息で行われるのだ。また「図書館殺人事件」はホラー演出も盛り込まれており、しかも場面がテンポよく次々と変わっていく。
それでいて、ほとんどの場面が伏線になっている。この点からサスペンス好きからの評判が高く、またそうでない人でも無意識に引き込まれるエピソードとなっているのである。このようなアニメ版の作り込みも相まって、「図書館殺人事件」は“屈指のトラウマ回”と呼ばれているのだ。