圧倒的な歌唱力と卓越した作曲能力で、時代を超えて支持され続ける歌姫・宇多田ヒカル。「Automatic」、「traveling」など数多くの名曲をリリースしてきた宇多田だが、実はアニメソングも何曲か歌っているのだ。そこで、本記事では3曲をご紹介。
■「One Last Kiss」/『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
2021年3月9日にデジタルリリースされた「One Last Kiss」。
本楽曲は人気アニメシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場版であり、シリーズ完結作でもある『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の主題歌となったことで話題となった。
温かい音色のシンセサイザーが曲全体を通して響き渡るエレクトロポップス。詩的な歌詞からは、悲しみを背負いつつもそれでも前を向こうとする情景が目に浮かぶ。後半にかけて盛り上がっていく曲調と相まって、完結作にふさわしい仕上がりとなっていた。
余談だが宇多田は事前に本作の台本を読み、ラストシーンを頭に浮かべながら曲の第一音を作ったとのこと。実にエモーショナルな制作秘話だ。
■「PINK BLOOD」/『不滅のあなたへ』
「PINK BLOOD」は2021年6月2日にデジタルリリースされた楽曲。
大今良時原作の漫画『不滅のあなたへ』がアニメ化した際のオープニングテーマに使用された。本作は刺激を受けたものの性質を記憶、コピーできる主人公フシの旅を描いた作品だ。
「PINK BLOOD」は宇多田得意のR&Bのグルーブを基本としたミドルテンポのナンバー。 “誰にも見せなくてもキレイなものはキレイ” という歌詞に見られるように、自分の価値観や決断を尊重すべきという宇多田の『不滅のあなたへ』に対する解釈を感じる楽曲となっている。
ちなみにタイアップのオファーをされた際、宇多田は原作漫画の『不滅のあなたへ』を読んで、面白かったということで引き受けたそうだ。
■「Good Night」/『ペンギン・ハイウェイ』
2018年6月27日に発売されたアルバム『初恋』に収録の「Good Night」。
本楽曲は森見登美彦原作のアニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』の主題歌。同作はミステリアスな女性の “お姉さん” と、突如街に出現したペンギンについての謎を真面目な少年・アオヤマ君が解き明かしていくストーリーである。
ギターのアルペジオとピアノの旋律が印象的なイントロは、心地よいながらも切なさを感じるサウンド。別れを彷彿とさせる歌詞は、本作に登場するアオヤマ君とお姉さんの関係性を表しているようであり、本編視聴後に聴くことでさらなる余韻に浸ることが出来るだろう。
宇多田自身は本楽曲を制作するとき “思春期の恋心” という構想を思い描いていたという。この構想を基に、レコーディングに参加したミュージシャンにも出してほしい音やニュアンスを伝えていたそうだ。