1980年代に放送されたテレビアニメ『世紀末救世主伝説 北斗の拳』で主人公・ケンシロウを演じた声優の神谷明氏。神谷氏の重くどっしりとした迫力のある声が馴染みの方も多いとは思うが、他のアニメやゲームでは別の方が声優を務めることも珍しくはなかった。
■小西克幸/『北斗無双』シリーズ、『北斗の拳 イチゴ味』など
『天元突破グレンラガン』カミナ役、『鬼滅の刃』宇随天元役で知られている声優の小西克幸氏。小西氏はコーエーテクモゲームスより発売されている『北斗無双シリーズ』や、北斗の拳のパロディギャグ漫画である『北斗の拳 イチゴ味』などの作品でケンシロウを演じている。
『北斗無双』で小西氏は、神谷氏のドスの利いた低音に近い声で演技しており、かなりテレビアニメ版のケンシロウに近い声であるという意見を多く聴く。 “あたたた” でお馴染みの拳による連打のシーンもテレビアニメ版の神谷氏のように甲高い声で好演。版権元がひと息で “あたたた” を言えるのは小西氏のみとお墨付きをもらうほど、クオリティは高いとされている。
ここまでみると小西氏は神谷氏の演技をリスペクトし、彼の演技を忠実に再現したと感じる方もいるだろうが、小西氏のケンシロウは神谷氏に比べると若干だが声に若さを感じる仕上がり。『北斗の拳』連載開始時のケンシロウの年齢が18歳ほどであることを考慮すれば、より年相応な声に近づいたと思う方もいるだろう。
■子安武人/『新・北斗の拳』
子安武人氏は『楽しいムーミン一家』のスナフキン役、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのDIO役で知られているベテラン声優のひとり。原作終了後のケンシロウを描いたOVA『新・北斗の拳』でケンシロウを演じた子安氏は、自身も『北斗の拳』の大ファンであり、役作りのために原作を読み返したり、キャラクターのフィギュアを並べたりしたという。
子安氏は持ち前の艶のある独特な声質を活かし、ニヒルな悪役やコメディリリーフ的な役を演じることが多いが、本作ではクールで寡黙なケンシロウを見事に演じている。テレビアニメ版を視聴していた方にとっては少し違和感を抱くかもしれないが、子安氏が放つ独特の間と深みのある声はケンシロウにぴったりとハマっていたので、気になった方はぜひ視聴してみてほしい。
また子安氏は『北斗無双』シリーズではレイも演じているなど『北斗の拳』に縁のある人物だ。子安氏の声は義理がたく熱い心を持つレイにぴったりなので、こちらもファンの方ならばチェックしておきたい作品である。
■阿部寛/『真救世主伝説 北斗の拳』
2006年から2008年までに制作されたアニメシリーズである『真救世主伝説 北斗の拳』。このシリーズでは声優経験がない俳優を起用したことで話題となり、主人公・ケンシロウも例にもれず俳優の阿部寛氏が演じている。
当時は “声優経験がないのにできるの?” という意見も多かった。実際、阿部氏の低く響く声はテレビアニメ版の神谷氏とのギャップがありすぎて、微妙と評するファンもちらほらいたようだ。しかし、劇画調と当時のトレンドをミックスしたような作画や、シリアスに重きを置き再構築されたストーリーと相まって、“これはこれでアリ” と評価するファンも少なくない。
また阿部氏が演じた “あたたた” のシーンは、神谷氏のバージョンとは違い地声をある程度残した発声となっており、本作を観ていない方からするとびっくりするかもしれない。