『ビーチボーイズ』25周年 反町隆史&竹野内豊の伝説のドラマを観返すと意外にも……

コラム

citrus 堺屋大地

 

1997年の夏に放送された『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)は今年で25周年。今なお第一線で活躍する反町隆史さんと竹野内豊さんがダブル主演を果たした伝説の月9ドラマを、『Smart FLASH』(光文社)でドラマ批評連載を持つ筆者が振り返ります。

 

 

■ “1997年の夏” を切り取ったファンタジーだった

筆者は個人的に、限定された期間を描いた物語や、 “別れ” に向かっていく物語が大好物。

“1997年の夏” を切り取った『ビーチボーイズ』という作品は、まさにそんなドラマでした。

一夏の海を舞台に、楽天家でお調子者のプータロー・広海(ひろみ/反町さん)と、クールで理知的なエリート・海都(かいと/竹野内さん)という、一見ソリが合わなそうな二人が友情を深めていくというストーリーです。

本来なら出会うはずのない水と油のような男二人が、千葉の海沿いに建つ民宿「ダイヤモンド・ヘッド」を訪れ、住み込みで働くことに。民宿のオーナーである勝(マイク眞木)、その孫・真琴(広末涼子)、近所のスナックの店主である春子(稲森いずみ)といった主要キャラを交え、広海と海都の一夏が描かれていきます。

 

反町さん自身が歌う主題歌『Forever』(反町隆史 with Richie Sambora)のイメージが強かったため、 “アイドル俳優のアイドルドラマ” という先入観を持ってしまっている人もいるかもしれません。というか筆者も、リアルタイムで視聴しているときは、そういうイメージを持っていました。

……が、25年経った今になって観返すと、 “大人の長い夏休み” を描いた物語はセンチメンタルに溢れていて、それでいて心地のいい空気感を漂わせた傑作だと感じたのです。

 

第1話のラスト、真琴のナレーションで「夏には夏だけの時間の進み方があるような気がするから」と語られますが、本作は現実世界ながらどこか非現実的なスローリーな時間の進み方を体感できる稀有な作品。

また、第3話で海都が一旦東京に戻るものの、正式に会社を辞めエリート商社マンの肩書を捨て、「生まれて初めてのバカ……がしてみたくなったの」と、再び「ダイヤモンド・ヘッド」に戻ってくるシーンも、なかなか琴線に触れます。

自分もこんなふうに、それまで築き上げてきたものを一旦全部リセットして、ゼロから新しい人生としてリスタートしてみたい。そんな願望はあれど、勇気がなくて実行することはできなかった別の世界線の “ファンタジー” を、海都を通して疑似体験できるのです。

 

ネタバレになりますが、最終話で広海と海都は “俺の海” (自分の居場所、自分のやりたいことみたいな意味)を探すため、「ダイヤモンド・ヘッド」を去っていきます。

“1997年の夏の海” という限られた時間と切り取られた場所。彼らが過ごした短すぎて濃すぎる夏の終わりを見届けると、とてつもない大きなロス感が去来することでしょう。

 

けれど、そんなロス感をすぐさま吹き飛ばしてくれるのが『ビーチボーイズ』でもありました。連続ドラマは1997年9月下旬に最終回を迎えますが、なんとたった約3ヶ月後の1998年正月に、その後を描いた新作スペシャルドラマとして帰ってきていたのです。

舞台を海外の南国に移しても、広海と海都の小気味よい掛け合いは健在でした。そしてスペシャルドラマ版のラストシーンにはほっこりさせられます。

『ビーチボーイズ』という作品は、実質2度の最終回があったようなものなのです。

 

――反町さんは、2015年から準主役を担っていた大人気ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)から、今春卒業したばかり。竹野内さんは、主演した昨年4月期の月9ドラマ『イチケイのカラス』(フジテレビ系)に映画化の噂があります。

25年前にダブル主演を果たした若手俳優ふたりが、渋い大人の役者として今でも第一線で活躍しているというのは、感慨深いものです。