盟友・井深大と共同で東京通信工業(現ソニー)を設立し、一代で世界的な大企業に育て上げた盛田昭夫。1998年には、アメリカの雑誌『TIME』の「20世紀の20人」に、日本人として唯一選ばれています。
人心掌握術に長け、さまざまな重鎮に「なぜかもう一度会いたいと思わせる」と言わしめた盛田。影響力の秘密は、彼の「どんな相手も恋愛対象だと思い、口説くように話す」習慣にありました。
細やかな話術や技術はなし。相手を「恋愛対象」と考える。たったそれだけの習慣が、彼に数々の成功をもたらしました。
たとえ仕事上の付き合いで会っている同性の相手でも、「恋愛対象だ」と考えて接している盛田の目は、本物の恋人に会うときのように、瞳孔が大きくなっていたはずです。
シカゴ大学のエックハルト・ヘス博士らの研究によると、人間は会話をするとき、目の前にいる相手の瞳孔の大きさを無意識のうちに「自分が相手に好かれているかどうか」の判断材料にしていることが明らかになっています。人は好きなものを見るとき、自然と瞳孔が開きます。いくら相手に好かれようとトークをしても、自分の瞳孔が開いていなければ、相手は「あまり自分のことを好きではないな」と感じてしまいます。
人は誰しも、自分を好いてくれる人には好意を抱くもの。盛田の大きな瞳孔を見て、相手は「自分をビジネスの仲間として好意的に見てくれているんだな」と思い、意気に感じたことでしょう。
盛田は成功の秘訣について、「出会った多くの人が、いつしか、なんらかの幸運をもたらしてくれた」と語っています。
つまり、盛田の周りの人たちが、自発的に「盛田の力になりたい」と考え、助けてくれたというのです。盛田は知らず知らずのうちに、相手を味方につけ、対人関係を円滑にする習慣を実践していたのです。
相手の目を見て話すのは基本中の基本。口説くつもりで話し、心の中で相手を「恋愛対象」と思い込む。もちろん、笑顔で。この習慣は、プライベートでも役立つことは間違いないでしょう。