歴史的英雄の活躍にもつながった?「明るい色」が持つチカラ

 

1940年5月にイギリスの首相に就任したウィンストン・チャーチル。
しかし、首相に就任した日にナチスドイツのオランダ、ベルギーへの侵攻が始まり、5月の終わりにはフランスに展開していたイギリス陸軍の撤退を余儀なくされました。

 

これまで「徹底抗戦」を主張して強気一辺倒だったチャーチルですが、さすがに弱気になりました。このときに自宅で取り出したのが、筆と油絵具とキャンバス。明るい色を使って、想いのままに絵を描いているうちに、自分の弱気が吹き飛んでいくのを感じたといいます。

 

色彩が人の行動に与える影響は古代ギリシャ時代から研究されています。赤色は交感神経を刺激して体温や血圧を上昇させます。オレンジ色は体を活動的にさせます。黄色は脳の活性化をうながします。明度や彩度の高い色は陽気な感情をもたらします。

 

また能動的に絵を描くことにより、脳の側坐核からやる気をうながすドーパミンの分泌が増加することもわかっています。おそらくチャーチルは経験則で、色と絵の効果を理解していたのでしょう。

 

従業員の欠勤が多いロンドンの工場で、原因を調査した結果、化粧室の鏡の蛍光が青色光であることにたどり着きました。鏡をのぞくたびに自分が病人のように見えることが欠勤増につながっていたのです。工場の壁を暖色系に塗り替えると、欠勤は減少したといいます。

 

ほかにも経験則として、明るい色の効果を人は知っています。たとえばバーゲンセールのポップは必ずといっていいほど赤色で描かれます。客の目をもっとも引きやすく、活動的にさせるからです。

 

フランスからの撤退後、ヒトラーから提案された和平を蹴り、チャーチルは本土決戦を辞さない覚悟で徹底抗戦を主張します。「バトル・オブ・ブリテン」で制空権を死守して、ナチスのイギリス侵攻を食い止め、国民的な人気を獲得したのでした。