『アヴィニョンの娘たち』など数多くの名画を描いた天才画家、パブロ・ピカソ。彼が91年の生涯で描いた油絵とデッサンは1万3500点、制作した版画に至っては10万点を数え、ギネスブックに「もっとも多作な美術家」として記されています。
芸術家としては社交的だったピカソですが、一方で人間関係に気疲れし、急に不機嫌になってしまうこともあったとか。「このままでは人間関係を壊しかねない」と考えた彼が取り入れたのが、「週に一度、誰とも会わない時間をつくる」というものでした。
人気者だったピカソの住んでいるアパートには、よく友人が訪れていました。愛想よく振る舞い、友人をもてなす反面、根っからの芸術家であるピカソは「本当はこの時間、創作活動にあてたい」と考えることもしばしばだったとか。それも、ピカソが不機嫌になってしまう原因のひとつでした。
しかし、週に1度、あえて誰とも会わない時間を設けてからは、人間関係に煩わされることも減り、時間と気力を思う存分、創作活動に向けることができるようになったといいます。
東京大学名誉教授であり医師の矢作直樹氏は、「相手と近づきすぎると、相手と自分の関係が見えにくくなる」として、時には親子、兄弟姉妹、友人、夫婦、恋人、ビジネスパートナーなどと距離を置くことを勧めています。あえて距離を置くことで、かえって関係が円満に保たれる場合もあるのです。接近しすぎず、それでいて離れすぎないで、相手との間合いをはかり、あえて「ゆるい関係」を築くことを提案しています。
誰とも会わない時間をつくってから、ピカソは「週に一度、午後いっぱいは、友人とのつき合いから解放された」と効果を実感。そしてついには「もっとも多作な美術家」としてギネスブックに載るほど大量の作品を生み出し、世界的な芸術家として名を馳せることに成功したのです。