木村拓哉さん主演の最新ドラマ『未来への10カウント』(テレビ朝日系)の視聴率(※ビデオリサーチ調べ/世帯平均視聴/関東地区、以下同)が、一桁台となり大きな話題に……。ですが、実は9年前のあるドラマで、すでに一桁台目前だったことをご存知でしょうか? 『Smart FLASH』(光文社)でドラマ批評連載を持つ筆者が振り返ります。
■28年前から二桁視聴率を獲得し続けていたという快挙
高校時代にボクシングで4冠を達成した元天才ボクサー・桐沢祥吾を木村さんが演じる『未来への10カウント』。桐沢は大学時代に網膜剥離でボクシングを引退し、その後最愛の妻を亡くしたこともあり、ピザ屋のデリバリーバイトで食いつなぐ自暴自棄な生活を送っていました。そんな彼が母校の高校ボクシング部のコーチに就任し、弱小化して廃部危機だった部を立て直していくというストーリーです。
視聴率は第1話が11.8%、第2話が10.5%と二桁台を記録したものの、第3話で9.9%に転落し、第4話は9.6%でした。木村さん主演のドラマは常に二桁台を取り続けていたため、『未来への10カウント』の第3話は木村さんのドラマ史上、初めての一桁台になってしまったのです。
木村さんの連続ドラマ初主演は28年前の『若者のすべて』(1994年/フジテレビ系/萩原聖人さんとダブル主演)。公式で主演と明記されていない作品でも、実質的にダブル主演と言えるような作品も含めると、『未来への10カウント』が25作品目の連ドラ主演作となりますので、ほぼ毎年1本ペースです。
つまり木村さんは1994年から28年間、コンスタントに連ドラに主演しており、24作品目まで二桁視聴率を獲得し続けたという、偉大な記録を打ち立てたことになります。
■大問題作『安堂ロイド』は10.3%でギリギリだった…
しかし、これまでの木村さん主演のドラマは、常に余裕で二桁視聴率を獲得していたわけではなく、実はけっこうスレスレで死守していたときもあったのです。
特に危なかったのは遡ること9年前の主演作『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』(2013年/TBS系)。TBSの看板ドラマ枠「日曜劇場」の作品であり、くしくも最終回に驚異の視聴率42.2%を記録した『半沢直樹』(2013年/TBS系)のすぐ次に放送されたドラマでした。
『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』は第4話で10.3%という、二桁ギリギリの視聴率を出してしまっていたのです。この日はプロ野球の日本シリーズの最終戦(第7戦)と重なり、東北楽天ゴールデンイーグルスが球団史上初の日本一を手にした日でしたので、ドラマとしては不運だったと言えるでしょう。ですが一桁台目前だったというのは事実……。
その要因は、設定やストーリーが突飛すぎたためだと考えられています。
木村さんが演じた主人公は、なんと100年後の未来からタイムスリップしてきたアンドロイド。『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明さんらが設定協力で参加するなど、鳴り物入りで始まったSF作品でした。
しかし、『仮面ライダー』シリーズや『スーパー戦隊』シリーズといった特撮作品で若手イケメン俳優が演じるならまだしも、アラフォーだった木村さんが演じるには少々無理があった役どころだった気がします。しかも硬派な作品が多い「日曜劇場」で放送されたことに、多くの視聴者が違和感を覚えていたのでしょう……。
高視聴率を記録していたドラマ『GOOD LUCK!!』(2003年/TBS系)で共演した柴咲コウさんをヒロインに迎えるなど、万全の布陣で臨んでいただけに、制作陣やTBSに大きな衝撃が走ったことは想像に難くありません。
――ただ、逆に考えれば、2013年に一桁台目前になりながらも、その後のドラマでも二桁台をキープし続け、『未来への10カウント』まで死守してきたことは、とてつもない偉業と言えるでしょう。木村拓哉さんが日本のドラマ界において、生けるレジェンドであることは間違いないのです。