高橋一生主演『インビジブル』、シリアスなサスペンス風の“警察パロディコント”だった?

コラム

citrus 堺屋大地

 

6月に最終回を迎えた高橋一生さん主演の『インビジブル』(TBS系)は、何かと警察の無能さが目に付くドラマでした……。そこで今回は『Smart FLASH』(光文社)でドラマ批評連載を持つ筆者が、『インビジブル』の警察の無能さをピックアップ!

※ここからは『インビジブル』のネタバレがありますので、未視聴の方はご注意ください。

 

 

■放送前から海外ドラマのパクリ疑惑が……

 

6月17日に最終回を迎えた『インビジブル』の主人公は、事件解決に異様なまでの執念を燃やし、手段を選ばない異端の刑事・志村貴文(高橋さん)。そしてバディとなるのが、本名・国籍・年齢の全てが不明という犯罪コーディネーター・キリコ(柴咲コウさん)。この二人が世に知られていない凶悪犯が起こす事件を解決していくというクライムサスペンスでした。

 

高橋さん&柴咲さんという人気俳優による異色のバディものということで話題を集めていましたが、放送前からパクリ疑惑が持ち上がっていた作品でもありました。

 

というのも実はあらすじや設定などが発表された時点で、2013~2014年度で “ドラマ新番組No.1高視聴率” を記録した、アメリカの犯罪サスペンスドラマ『THE BLACKLIST/ブラックリスト』に設定が酷似していると噂されていたのです。

 

確かに『THE BLACKLIST/ブラックリスト』も『インビジブル』も、犯罪者が突然投降してきて情報提供を持ち掛け、警察と犯罪者の男女コンビが事件を解決していくという構図。とても酷似していましたので、パクリ疑惑が噴出するのも否めなかったように思います。

 

 

■犯罪者たちをほいほいと取り逃がす警察

 

そんな『インビジブル』ですが、放送スタートしてから視聴者から指摘が相次いだのは、『THE BLACKLIST/ブラックリスト』のパクリ疑惑よりも、警察の無能さだったのです。

 

例えば、キリコはあくまで犯罪者なので担当警官が監視していたのですが、外出先であっさり単独行動を許してしまったり、別の凶悪犯の張り込みをしていたはずの刑事が無線を外してトイレに行ってしまいまんまと逃げられたり……。

 

また、キリコを監視下において住まわせていた特別施設から、彼女はやすやすと脱走。それもそのはず、キリコを見張っていたのは前述のポカをした担当警官一人だけで、その男はキリコの仲間に麻酔薬スプレーをかけられて使いものにならなかったんです。

 

他にも、重大事件の容疑者を検察へ護送中、道路工事を偽装していた “逃がし屋” 一味に護送車を襲撃され、簡単に容疑者を連れ去られてしまう体たらくぶりを披露していたことも……。

 

こうして列挙していくと、犯罪者たちが優秀なのではなくて、単に警察が無能すぎるゆえに事件が激化しているように思えませんか?

 

 

■最終話でもエリート刑事の体たらくは健在

 

そして迎えた最終話でも警察の無能さは際立っていました。

 

黒幕キャラ(最大のネタバレとなるため誰だったのかは伏せておきます)をとあるスタジアムのフィールド上で追い詰めたのですが、このクライマックスシーンもコントのようでツッコミどころ満載でした。

 

フィールドの中央にいた黒幕とキリコを、志村と何十人もの刑事が取り囲みます。それまで黒幕の計画どおりに進んでいたかと思いきや、実は志村や刑事たちは黒幕の思惑を全てお見通しで、黒幕を逮捕するために泳がせていたのでした。

 

志村たちは黒幕を追い詰めて、『金田一少年の事件簿』の金田一ばりにドヤ顔でタネ明かしをしていくのですが、いくらでも黒幕を取り押さえるタイミングはあったのに、志村を含め何十人もいる刑事たちは種明かしショーに夢中。そのため黒幕がキリコに銃口を向け、あっさり人質に取られてしまうのです……。

 

とは言え、何十人もの刑事たちが多方面から黒幕を取り囲んでいる状態。黒幕は志村と会話していたため、つねに黒幕の背中側にいる刑事たちが何人もいたので、いくらでも黒幕を取り押さえるチャンスはあったように思います。

 

が、無防備に背中をさらしている黒幕に対し、何もしないポンコツ集団と化していたのです。ワラワラと集まってくるものの攻撃してこないその姿は、人気アクションゲーム『三國無双』『戦国無双』『ガンダム無双』などの、無双シリーズの敵のザコキャラの如し。

 

最終的に志村の見事な狙撃で黒幕を制圧し、無事に逮捕してめでたしめでたしというフィナーレでしたが、彼らは警視庁 刑事部 捜査一課の刑事たちなので、エリート中のエリートのはずなのにこの体たらくは……。

 

本来はシリアスなサスペンスドラマなんでしょうが、ここまでくると “警察パロディコント” なんじゃないかと思ってしまいました。