なぜ今回の侍JAPANは世間を魅了するのか? 川﨑宗則氏の分析から考える

コラム

 

『第5回 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の侍JAPAN戦の視聴率が、軒並みとんでもないことになっている。

 

第1ラウンドの世帯視聴率は、中国戦:41.9%、韓国戦:44.4%、チェコ戦:43.1%、オーストラリア戦:43.2%……と、すべて40%超え! 「最後の国内戦」「負けたらおしまい」「意外と侮れないダークホース的な存在・イタリアの不気味さ」「大谷選手のリアル二刀流登板→ダルビッシュ選手との黄金リレー」……etc.と、見どころ満載だった準々決勝のイタリア戦にいたっては、48.0%という、WBC最高視聴率を大きく更新する驚異的な数字を叩き出した。

 

「視聴率40%超え」とはいっても、街に出れば「WBCってなに?」「大谷って何流?」……と、「10~20代女子の半数は興味なし」みたいなたぐいの記事もいくつか散見したが、私個人の身近な周辺をザッと見渡すかぎり……「ゴロとフライの区別もできない」レベルの “普段は野球に無関心” な女子たちも、今回の侍JAPANの奮闘にいたっては、それなりに日々の歓喜の渦へと取り込まれている印象がある。

 

さて。そんなさなか、こんな私の主観的な雑感を裏付けるかのような(気がしなくもない)、珠玉のインタビュー記事をネット上で発見した。

 

配信元は『文春オンライン』──インタビューイは、かつてWBCの日本優勝にも多大なる貢献を果たした元侍JAPAN戦士の「ムネリン」こと、あの川﨑宗則氏である。川﨑氏は(今回の)侍JAPANの “キーマン” を


「チームの雰囲気づくりをマネージメントした栗山監督」

 

……とし、その「チームの雰囲気」の現状を、こう分析している。

 

試合をする以上、選手は勝敗に当然こだわるわけですが、今回のチームは、すでに勝ち負けを超越しちゃってる感じがします。大谷選手やヌートバー選手の表情を見ていると、野球そのものを楽しんでる感じがしませんか?

 

(中略)結果として優勝が出来ればいいですが、それ以前に大切な価値があることが分かります。これはダルビッシュ投手も言ってましたが、WBCで出会った仲間と、3月という時期に野球を一緒に楽しめるということが、最高のご褒美なんじゃないかと。そういう意味で、もう最高のチームになってるような気がします。

 

(中略)これまで、WBCでは勝つことが強調されてきた面があると思います。でも、今回のダグアウトを見ていると、素晴らしい男たちが「JAPAN」のユニフォームを着て、一緒に野球を楽しむというメッセージを発信している。ある意味、僕も勉強になってますよ。

 

(中略)僕の眼からは、栗山監督を筆頭に選手たちが目標を共有し、互いを励まし、プレーボールからゲームセットまで、最高の瞬間を楽しんでいる男たちに見えます。彼らが楽しんでいるパワーも強いから、それを僕たちがもらってるんですよ。彼らは、侍ジャパンであり、野球少年です。

そう! 今回の侍JAPAN戦は、「歴代最強軍団」と呼ばれる “世界レベルの野球エリート” のパフォーマンスもさることながら、ダグアウト内で所属チームの看板選手らが、その垣根を超えて(たとえ試合に出場できなくても、クサることなく)無邪気に盛り上がっている姿や、敵チームへのリスペクトを忘れない “プレー外” の立ち振る舞い──(競技上の性質という面において)「野球」でしか目の当たりにすることのできない微笑ましい光景を「共有」できるのが、なによりも “楽しい” のである。また、こういう “楽しみ方” は、我々野球ファンだけではなく、「ゴロとフライの区別もできない」レベルの女子ですら、十分に「共感」できる醍醐味であろう。

 

もし、「 “普段は野球に無関心“ な層も、今回の侍JAPANの奮闘にいたっては、それなりに日々の歓喜の渦へと取り込まれている」という私の「雑感」が、ある程度正しいのなら、彼ら彼女らは漫画『ONE PIECE』をワクワクしながら読み耽っているような気分を味わっているのかもしれない。ルフィ(=大谷選手?)という、「海賊王にオレはなる!」といった途方もない夢を抱く “少年” のもとに一癖も二癖もある才人たちが集まり、「仲間」として “一つのチーム” となりながら、その困難極まりない目標へと遮二無二突き進んでいくプロセスに、我々は “感動の源” をダブらせているのだ。

 

ちなみに、私は前出した川﨑宗則氏とはちょっとした親交があって、彼がまだメジャーリーガーだったころ、何度かシーズン前の自主トレにご一緒させていただいたこともある。40歳から野球をはじめた素人同然の私にも、ムネリンはとてもやさしく、初対面から「ゴメちゃん」と気さくに接してくださり、私のつたないプレーひとつ一つにも、いちいち「ナイスキャッチ!」「いい球来てるよ」……とのエールを連発。さらには「歩き打ちしてみたら?」「そうすれば、もっと体重移動がスムーズになるから」と、バッティングのアドバイスまでしてくれた。

 

そして、自主トレで汗を流しているムネリン自身が……とにかく誰よりも “楽しそう” だった。だからこそ……今日このコラムで引用させていただいたインタビュー記事も、ムネリンみずからが「野球を楽しむこと」を心底から実践しているからこそ……その一言一句にもいっそうの説得力が宿るのではなかろうか。

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