コストとスピード… ネット通販の過剰サービスが生む物流業界の歪み

ビジネス

佐川急便のドライバーが駐車違反した際、同じ営業所の人間が身代わり出頭に関わったとして、6人が逮捕されたのは先月のこと。続いて今月13日には、一挙28人が書類送検された。この営業所では、違反の取り締まりを受けると運転業務ができなくなる規則だったため、業務に支障をきたさないよう身代わりをさせていたとのことだ。弁解の余地もない事件ではあるけれど、昨今の物流業界の状況を考えると、起こるべくして起こった事件という感想も抱いている。

 

東京に住むひとりとして最近気づくのは、軽商用車の数が目立つようになったことだ。インターネット通販で購入した商品の配送が急激に増えていることが理由だろう。広い場所で大きなトラックから軽に積み替え、住宅地内の配送に向かうシーンをよく目にする。しかし都内は空き地が少ない。停めるとなれば必然的に駐車場に入れることになるが、料金は高い。そこで違法駐車を余儀なくされ、捕まってしまったというシーンが思い浮かぶのだ。トラック業界は慢性的なドライバー不足であり、高齢化が進んでいる。その状況下で急増する荷物を捌いていかなければならない。でも急いでいるからと違法駐車をすれば警察のお世話になってしまう。労働状況が過酷になっていることは間違いない。

 

物流がらみで最近気になったもうひとつの出来事として、配送の遅れを体験したことがある。日本の物流は以前から、指定した時間に確実に届くことが世界的に評価されていて、それを武器とした海外進出も盛んだ。それが遅れる。システムそのものが限界にきているのではないかという気がする。

 

ネット通販のページを見ると、送料無料、スピード配送の文字があちこちに躍っている。たとえばアマゾンは会員向けとしてお得なサービスをいくつも展開しており、最近は壁などに貼り付け、日用品の補充がワンタッチでできるボタンまで売り出した。家電量販店などでも対抗策として、さまざまなサービスを打ち出している。こうした販売業者主導による最近の無料競争、スピード競争は度が過ぎると感じている。特にスピードは、その地域を移動している人なら、おおよその計算はできる。インターネットで注文してから数時間で荷物が届くというサービスは、誰かに無理を強いているはずだ。違法駐車がこうしたサービス競争と無縁とは言えないだろう。

 

国も対策に乗り出してはいる。たとえば国土交通省は数年前から、トラック輸送を鉄道や船舶などに切り替えるモーダルシフトを推進していて、今年10月に一部が改正された「物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」でも、モーダルシフトの取り組みを認定・支援することになった。モーダルシフトというと、普通は環境対策で行うものだが、改正物流総合効率化法でのそれは、少し意味合いが異なる。トラックドライバーの約3割が50歳以上であるとともに、ネット通販の進展により小口貨物が増加していることなどを理由としているのだ。やはり原因はここにあった。

 

といっても、鉄道や船舶で転換できる物流は限られている。ではどうすべきか。ひとりひとりが、物流には相応の時間とコストが必要であると認識し、明らかに過剰なスピードや低価格をアピールするサービスは使わないという意志表示をすることではないだろうか。運んでいるのはモノだけれど、それを操っているのは人間であり、度を超えたサービス追求は当然ながら事故に結びつくことを忘れてはいけない。

 

筆者もネット通販は利用するけれど、料金や時間については通常のサービスを使うことにしている。自分の街の物流ドライバーが無理なく仕事をすることが、街の安全にもつながるからだ。

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森口将之

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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