なぜ「広島電鉄宮島線」が並走するJRより利用されるのか? 手ごろな料金と便利さ、超低床車両の魅力に秘密があった!

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全国を走る路面電車の旅 第20回 広島電鉄【後編】

 

 

日本最大の軌道事業者である広島電鉄。前回に引き続き、同電鉄の魅力に迫ってみよう。広島電鉄の路線の総延長は35.1キロ。そのうち、鉄道線が16.1キロを占めている。今回は、この鉄道線(専用軌道)部分にあたる「宮島線」に注目した。

 

広島電鉄宮島線は広電西広島駅と広電宮島口駅の間、16.1キロを結ぶ専用軌道区間だ。JR西日本の山陽本線に、ほぼ並行して路線が走っている。JR山陽本線と広電宮島線は、この区間ではいわば“ライバル路線”といえるだろう。この2つの路線、数字だけを追うと圧倒的に広島電鉄の方が不利なように思える。

 

JR山陽本線の駅数は、西広島駅~宮島口駅間で7駅(起終点駅を含む)。一方の宮島線は21駅(同じく起終点駅を含む)。一駅一駅停車しながら走る宮島線の方が、当然ながら時間がかかる。山陽本線を利用すれば約20分。それに対して宮島線を利用すると約35分と、15分ほど余分に時間がかかる

 

ところが、両路線を比べると、山陽本線より宮島線の乗客の方が明らかに多い。日中はほぼ10分間隔(山陽本線は約15分間隔)と頻繁に走っているにも関わらず、どの電車も結構な利用率なのである。とくに広島駅行き電車ならば、宮島口を出たときには空席が目立つ電車が、広島市内が近づくにつれ混み方が顕著になってくる。

 

宮島線の阿品東駅付近からは、広島湾越しに宮島の威容を前面に眺め走る

 

 

 

【歴史・人気の理由】料金&便利さでいまや欠かせない路線に

 

広島市内の路面電車が走り始めたのは1912(大正元)年のこと。それから約10年後の、1922(大正11)年に己斐駅(現広電西広島駅)~草津駅間が開業、1931(昭和6)年に宮島口まで走る宮島線が全通した。JR山陽本線の元となった山陽鉄道(後の国鉄山陽本線)の開業は1897(明治30)年のこと。この山陽鉄道に比べると、宮島線はかなり後発の路線だったことがわかる。

 

その後、宮島線は四半世紀にわたり、西広島駅~宮島口駅間で折り返し運転が行われていたが、1958(昭和33)年4月から市内電車と宮島線との直通運転が開始された。宮島線の沿線には、広島市佐伯区廿日市(はつかいち)市の住宅街が連なる。駅数が多く、駅間は最短で400メートル、離れていても約1キロ。沿線に住む人にとっては、宮島線は駅数も多く身近にあって便利なのだ。

 

宮島線の終点駅・広電宮島口駅。駅のほぼ目の前に宮島への連絡フェリーの乗り場がある

 

しかも、宮島線の電車に乗れば広島市の紙屋町などの繁華街へは直接行けるメリットもある。JRを利用した場合、JR広島駅や西広島駅などから、必ず広島電鉄の市内線への乗り換えが欠かせない。広島電鉄にとって、この“地の利”が大きく役立っている。

 

さらに、運賃の手ごろさも魅力だ。JR山陽本線の宮島口駅~西広島駅間の運賃は320円。宮島線の同区間の運賃は210円と、110円も割安となっている。市内線をそのまま乗り継いでも、最高で260円で市内各所へ行けてしまう。JRプラス広島電鉄市内線の利用だと320円+160円=計480円となる。

 

頻繁に利用するとなると、この運賃差は大きい(電車一日乗車券600円も販売されている)。加えて、PASPYという広島の地元ICカードを使えば最大10%割り引きになる特典も見逃せない(他のICカードはJR西日本のICOCAのみ利用可能)。

 

このほか、車両も大きなポイントだ。次に車両の魅力を見ていこう。

 

宮島線の主力5000形。海外の多くの都市で使われるシーメンス社のコンビーノシリーズの電車を導入

 

 

 

【車両】ドイツ・シーメンス社製の連接車が主力として活躍

 

路面電車の車両というと、乗車したときに “がたごと”と走る印象がある。宮島線では専用軌道区間で、最高時速60kmの高速運転が行われている。しかも市内線の併用軌道区間も走るので、すぐれた加速、減速性能を持つ車両が使われる。

 

宮島線を走るのは連接車のみ。大半が1980年以降に造られた車両で、市内線を走る電車と比べると、ずいぶんと新しい。車両の中で12編成と最も多いのが5000形だ。1999(平成11)年にドイツのシーメンス社から購入した超低床車両で、「グリーンムーバー」の愛称が付く。

 

この5000形は、これまでの路面電車の概念を根底から覆し、日本中に衝撃を与えた車両だ。2000年には、鉄道友の会が選定する「ローレル賞」を受賞した。超低床車で乗り降りしやすく、乗ってみると車内にステップがなく、そのぶん広く感じる。乗り心地も路面電車とは思えない快適さである。

 

「LRV(Light Rail Vehicle)」という言葉が、国内に広く知られるようになったのも、広島電鉄が5000形を導入した以降のことである。日本の路面電車にとって革新的な電車だった。

 

5100形は3台車に5車体が載る構造。写真の5101号車は広島観光インフォメーション電車だ

その後、2005(平成17)年には、10編成の5100形「グリーンムーバーマックス」が導入された。この電車は純国産技術で造られ、5000形に比べて座席数が増え、弱点だった冷房装置の機能を高められた。また、車椅子でも車内移動ができるなど改善されており、その快適性から利用者の人気が高い。

 

宮島線を走る電車は、ほかに3700形、3800形、3900形、3950形など。みな「ぐりーんらいなー(3950形のみGreen Liner)」という愛称が付けられている。

 

1984年に導入された3700形。3車体4台車の連接構造で現在、5編成が宮島線走っている

3950形「Green Liner」。阿品東駅付近では広島湾沿いに設けられた牡蠣棚を横に見て走る

 

 

 

【沿線】宮島が近づくと車窓風景が住宅街から海景色に変貌

 

路面電車の路線といっても宮島線は郊外電車の路線といった趣で、車窓も楽しめる。市内線の新己斐(しんこい)橋を渡ると、まもなく広電西広島駅がある。この広電西広島駅からが宮津線。全区間が鉄道線(専用軌道)となるので、自動車に邪魔をされることもなくスムーズに走り、快適だ。

 

途中、草津南~商工センター入口間では、荒手車庫に注目したい。3100形といった、あまり路線に姿を見せない車両も留置されている。その後、しばらくJR山陽本線と平行して走るので、JR線を行き交う、電車や貨物列車とのすれ違いも楽しみだ。

 

地御前(じごぜん)駅までは住宅街が続くが、その次の阿品東駅までの駅間で広島湾が見える区間へ。ここでは広島湾越しに宮島(厳島)が見える。古代から自然崇拝されてきた島だけに、海上にそびえる姿には圧倒される。こうした海景色が見え始めたら、終点の広電宮島口も近い。

 

宮島へ渡るのには広電1日乗車乗船券(1800円)がお得だ(松大汽船の乗船券付き)。なお、JR西日本が運航する宮島フェリーの利用の場合は、別料金となる。

 

鉄道連絡船としての歴史を持つJR西日本宮島フェリー。広電宮島口駅のすぐ目の前に乗り場がある

 

宮島口の名物「あなごめし」。駅売弁当として1901(明治34)年に販売されたのが始まりとされる

 

 

 

【TRAIN DATA】

 

路線名:市内線/本線(広島駅〜広電西広島間)、宇品線(紙屋町〜広島港間)、江波線(土橋〜江波間)、横川線(十日市町前〜横川駅間)、皆実線(的場町〜皆実町六丁目間)、白鳥線(八丁堀〜白鳥間)。

 

鉄道線/宮島線(広電西広島〜広電宮島口間)

 

運行事業体:広島電鉄

 

営業距離:35.1km(うち鉄道線は16.1km)

 

軌間:1435mm

 

料金:160円(市内線・白鳥線のみ利用は110円)、宮島線は区間運賃制(120円〜210円)

 

開業年:1912(大正元)年

 

*広島電鉄の前身、広島電気軌道が広島駅前(現・広島駅)〜相生橋(現・原爆ドーム前)と紙屋町〜御幸橋西詰(現・御幸橋)、八丁掘〜白鳥間を開業

 

宮島線は1922(大正11)年8月に己斐町〜草津間が開業

 

文:星川功一

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