「妊娠菌」「赤富士」ジンクスの正体が判明! 脳に浮かんだ映像を再現する力について

ライフスタイル

清水なほみ

 

「妊婦さんにお腹を触らせてもらったら妊娠しやすくなる」というジンクス、皆さんもどこかで聞いたことがあるかもしれませんね。私も妊婦時代に、妊活中の方に「お腹を触らせて~」と言われたことがあります。なんでも、妊婦さんを触ると「妊娠菌」がうつって、妊娠するのだとか…。もちろん、医学的にはそんな「菌」は存在しませんし、妊婦さんを触ったからといって妊娠していたら、女性産婦人科医も助産師も次々に妊娠してしまうことになりますから、科学的根拠のないジンクスであることはお分かりいただけるかと思います。では、なぜ妊婦さんのお腹を触ると妊娠しやすくなったり、身近な人が妊娠すると次々に周辺で妊娠する人が増えたりするのでしょうか。それは、脳が「映像としてイメージしたことを実現する」という特性を持っているからです。

 

話は少し変わりますが、子どもに「こぼしちゃだめよ」と言いながらお茶の入ったコップを渡して数秒後に「こぼしちゃった」「だからダメって言ったじゃない」というやり取り、見たことあるいは経験したことありませんか? 実は、これも脳の特性が引き起こしていることなのです。「こぼしちゃだめ」と言われた時点で、子どもの脳には「コップの中身をこぼしている映像」が映し出されます。なので、お茶をこぼしたその子は脳に浮かんだ映像を忠実に再現しているだけなのです。

 

妊娠を希望している女性が妊婦さんのお腹を触っている時、その女性の脳の中にはどのような映像が映し出されるでしょうか?おそらく、自分がその妊婦さんと同じお腹になっている姿を想像すると思います。脳の中に「妊娠した自分」を思い浮かべれば思い浮かべるほど妊娠しやすくなりますから、妊婦さんのお腹を触らなくても、身近なところで常に妊婦さんの姿を目にしていると、妊娠しやすくなるというわけです。ちなみに、医療従事者が妊婦さんを触っても妊娠しやすくならないのは、本人が妊娠を希望していなければ、妊婦さんを見ても「自分が妊娠している姿」は思い浮かべないからです。

 

陣痛中の妊婦さんが描いた富士山を持っていると妊娠しやすくなる、といジンクスも基本的には同じ原理です。「陣痛中の人が描いたんだよ」と聞いた時点で、どのような映像が脳に浮かんでくるでしょうか。おそらく、お腹が大きくて妊娠している姿、またはその後の生まれたての赤ちゃんを抱っこしている姿がイメージされるでしょう。さらに、赤い色は「赤ちゃん」を連想させるので、無意識のレベルでも「赤ちゃんがいる自分」が刷り込まれていくことになります。

 

妊活中に「妊娠したい」と思うと妊娠から遠ざかるのは、これらのジンクスと逆の原理です。「妊娠したい」と思っている時点で「今現在妊娠していない自分の姿」が映し出されることになります。なので、妊娠していない姿をイメージしながら妊娠している姿になろうとする、という脳にとっては混乱しやすい状態が引き起こされるのです。この状態を「ダブルバインド」と言います。「妊娠菌」も「赤富士」も、本人がイメージ力を駆使しなくても、簡単にこのダブルバインドを解いてくれるイメージワークのようなものなのです。

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清水なほみ

女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性...

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