「準中型」登場で免許制度がまた変更、それでも難しいトラックドライバー不足の根本解決

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今年3月から、トラックの運転免許制度がまたも変わることになった。これまでは車両総重量5t未満が普通免許、5t以上11t未満が中型免許、そして11t以上のトラックが大型免許という区分けだった。普通免許は18歳で取得可能だが、中型は20歳以上かつ普通免許等保有通算2年以上、大型は21歳以上かつ普通免許等保有通算3年以上でないと取ることができなかった。

 

今度の改正では、普通免許と中型免許の間に準中型免許が新設されることになった。普通免許は車両総重量3.5t未満、準中型は3.5t以上7.5t未満となるが、どちらも18歳で取得可能であり、いきなり準中型免許を取ることもできる。中型および大型については従来どおりだ。

 

最初になぜ「またも」と書いたかというと、トラックの運転免許は2007年に改正されたばかりだったからだ。それ以前は普通免許と大型免許の2種類しかなかった。普通免許で車両総重量8t、最大積載量5t未満のトラックが運転できた。それ以上は大型となり、20歳以上かつ普通免許等保有通算2年以上という縛りがあった。ただし乗用車と同じように、トラックもしだいに大型化、高性能化が進んでいく。その結果、普通免許しか持っていないドライバーのトラック事故が目立つようになった。さらに普通免許で総重量8tのトラックが運転できる日本の免許区分は、世界の基準から見れば甘いという声もあった。そこで中型免許が生まれたのだという。

 

ところが中型免許が登場したあたりから、今度は物流業界のドライバー不足と高齢化が問題となりはじめた。これについては以前、佐川急便ドライバーの駐車違反身代わり問題がテーマのときにも触れたけれど、インターネットショッピングの急激な増加に対して、流通のキャパシティが追いついていないことが露わになってきたのだ。中型免許が導入される前は、普通免許で相応のサイズのトラックが運転できた。筆者もこの時代に免許を取ったので、仕事で最大積載量4.5tのトラックを運転したことがある。しかし中型免許が生まれると、2年間の運転経験をしたうえに、新しい免許を取り直さなければならない。これが障壁になっていると考えられたので、ハードルを少し下げるような形で準中型が誕生したようだ。

 

このニュースを見て、付け焼き刃的な対策だと思ったのは自分だけではないはずだ。トラックドライバー不足と高齢化は、免許制度以外の部分に大きな理由がある。昨年から筆者を含めた一部のメディアが報じているとおり、過酷な労働環境が最大の原因である。それが原因とされる交通事故も各地で起こっており、こちらもまたメディアをにぎわせている。そんなニュースがひんぱんに流れている中で、トラック業界を目指そうという若者が少なくなるのは当然だ。まずは労働環境の改善こそ真っ先に行うべきではないだろうか。

 

以前も書いたように、問題解決のためには私たち消費者も動かなければいけない。物流には相応の時間とコストが必要であると認識し、過剰なまでの早さや安さをアピールするサービスは使わないことが大切だ。度を超えたサービス追求は事故に結びつくことを忘れてはいけない。それに中型免許を導入した理由のひとつとして、諸外国に比べて普通免許で運転できるトラックの範囲が広すぎたことが挙げられていたのに、今回制定される準中型では18歳でいきなり免許を取って、中型免許誕生以前の普通免許と同等のトラックが運転できる。中型免許設定の理由はなんだったのかと思ってしまう。

 

とにかく昨今のトラックドライバー不足と高齢化は、免許制度を変えただけでは根本的な解決にはならないだろう。私たち消費者も含めた日本全体が、物流についてもう一度ゼロから考え直すことが必要な時期に来ている。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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