我慢する人生は終わり!英雄「ジェットストリーム」によるボールペンの革命

ライフスタイル

 

■欠点を“なぜか”我慢し続ける人生

 

満員の電車に乗っていると、「人類はいつまで通勤ラッシュに耐えなければならないのだろう」と思う。「ラッシュ時」なんて言葉があることからも分かるように、混む時間帯なんかとっくに分かっていて、どのくらいの人数が乗降するかも分かっていて、それが何十年も続いているのに、対策と言えば時差通勤とか、次の電車を待てとか、何故か、乗客側が行う方策ばかりだ。何だかもう、ラッシュはどうしようもないから、諦めて我慢してくれと言われているようだ。

 

この、何故か利用者側が我慢を強いられて、何だか諦めてしまっているような状況というのは、結構、そこら中にあって、雨が降ったら傘をさすなんて事、もうそろそろしなくても良いのではないかとか、劇場の椅子が、チケット代は高いくせに、映画館よりも狭くて座りにくいのはどういうことだとか、そういうことが結構あるのが人生なのだ。

 

 

■ジェットストリームが「革命的」な理由

 

三菱鉛筆の「ジェットストリーム」が行ったことというのは、そういうことの解決だったのだ。ボールペンというのは、何だか知らないが、しっかり筆圧を掛けて書かないとうまく書けない上に、紙の繊維が絡まってボールが回らなくなったり、インクがぼとぼとおちたり、といった、欠点がやたらと多かったのだ。

 

だから、作家は万年筆を使うし、学生はシャープペンシルを使う。万年筆的な書き心地をボールペンでもと考えられた水性ボールペンは、欧米では受け入れられたけれど、日本ではボールペンのくせに裏写りするし、乾きが遅いし水性インクは水に流れると謂れなき誤解も含めた先入観で普及せず、ゲルインクは女子学生ご用達として、何故か大人は使わず。その状況の中で、スラスラ書けてトラブルが少ないボールペンが登場したのだ。しかも150円で。

 

 

■不況という時代背景も追い風に?

 

そして時代は、不況のため会社がボールペンを支給しなくなり、自分で自分が使うボールペンを買わなければならなくなっている。そこに、今まで使っていたボールペンが嘘だったかのような書き心地のボールペンがあれば、それは飛びつくし、ビックリするし、今までボールペンで書くという、ことは、何らかの我慢を強いられていたことにも気がついてしまう。

 

実のところ、書き心地の良いボールペンやインクは、それまでも少しずつ開発され、発売されていたのだけど、普通の値段で買える、普通の形をしたノック式で、とにかく書き味が軽い、しかも油性のボールペンというのは無かった。書いた人は、ビックリするから人に勧める。書けば分かるくらい、それまでの会社支給のボールペンとは書き心地が違うから、どんどん広がっていく。我慢しなくてよくなるのだから、前のボールペンには戻れない。

 

書き心地だけを言えば、ゲルインクや水性インクの方が滑りも良いし、サラサラ書けるのだけど、公式な書類やビジネスの文書は油性でなければならない伝説は根強いから、ジェットストリームが標準のボールペンになった。筆記具メーカーもこぞって、「ジェットストリーム」のような「低粘度油性インク」を開発し、油性ボールペンといえば、軽い書き心地が当たり前になって、後は、メーカーごとの好みの問題になる。こうやって、油性ボールペンが私たちに強いていた我慢から日本人は解放された。

 

 

■消せるボールペン「フリクション」の登場

 

その次に世間をビックリさせたのは、パイロットの「フリクションボール」。いわゆる「消せるボールペン」だ。「ジェットストリーム」とほぼ同じ頃に出た「フリクションボール」は、ノック式でもなく、スラスラ書ける軽い書き味でもない。でも、水性インクなので、書き味が重いわけでもなく、何より「消せる」のだから、「ジェットストリーム」や他の低粘度油性ペンと競合しない。だって、油性でさえないのだから。

 

ここで、日本人は、「書き心地」と「機能性」という二つの評価軸を手にする。それまで、筆記具を、そんなふうに評価し、選んで使うなんて文化は、本当に一部のマニアのものだったのだ。それが、かなり普通のことになっていったのは、やはり、「我慢しなくていい」という事になったからこそだろう。

 

毎年行われている、OKB48というボールペンのイベントがある。48本のボールペンの中からお気に入りの1本を投票して、ペンケースのセンターを決めるというイベントだ。そして、第一回以来、去年行われた2016年大会まで、「ジェットストリーム」は1度も1位の座を譲ったことがない。私たちを謂れなき「我慢」から開放してくれた英雄は、今でも皆の英雄なのだ。通勤電車の乗り心地について、当たり前に語る人が少ないというのは、電車が当たり前のように「我慢」を強いているということ。これを無理してでも解決できれば、その鉄道会社は、そういう存在になれるよ、早くしないと他所にやられてしまうよ。

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納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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