「変身する通勤電車」西武鉄道40000系は関東の私鉄にインパクトを与えるか!?

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野田隆

西武鉄道40000系は観光列車、通勤列車のどちらでも使用できる使い勝手のよさが特徴

1年ほど前に製造が発表され、その画期的な創意工夫に登場が待たれていた新感覚の通勤電車、西武鉄道40000系が報道陣に公開された。予想にたがわず魅力的な通勤車両であり、そこには近年の鉄道利用者の要望やそれに応える鉄道会社の取り組み、その傾向が如実に現われたものとなっている。

 

■夢のラクラク通勤を実現する“デュアルシート”


首都圏の通勤通学ラッシュは、少子高齢化の影響で一昔前よりは若干緩和されたと数字の上では言われても、感覚的には相変わらず辛いものである。少しでも楽に、せめて座って通勤したいという要望は根強い。特急専用車両を持っている路線では、本来観光用であった電車を通勤ライナーとして活用してきたが、停車駅は限られるし、車両を走らせる側からすると、必ずしも効率的な運用ができない。


そこで考案されたのが、もっぱら観光用の車両のインテリアであるクロスシートと通勤型の必須アイテムであるロングシートを兼ね備えた車両(デュアルシート)であり、関西の近鉄L/Cカーを皮切りに、東武東上線では2008年6月にTJライナー(50090系)が登場、今回の西武40000系のあとは、京王電鉄の新5000系にも採用される予定である。

通勤車両なので片側4扉であり、ホームドアにも対応する。厳しい条件の中での取り組みは大いに評価したい。

 

通勤仕様のロングシートと観光仕様のクロスシートを使い分けることができる

■多様な利用者と2時間を超えるロングランへの配慮


通勤電車の利用者は、働き盛りのビジネスマンや学生ばかりではない。車椅子利用者、ベビーカーを持った人も少なからずいる。もっとも、そうした人々が一般の利用客と混在すると、満員の車内ではトラブルになることもありうる。そこで、西武40000系では、池袋寄り、本川越寄りの10号車運転台後ろのスペースを「パートナーゾーン」として対応することにした。車内中央部の簡易座席以外にシートはなく、車椅子を固定させる器具、小さな子供でも車窓が楽しめる大きな窓などを用意し、特別な区画としてアピールしている。

 

10号車の一部を「パートナーゾーン」に設定。車椅子やベビーカーに対応する。子どものために窓も大きく設定


また、西武秩父~元町・中華街間の2時間を超えるロングランにともない、1ヶ所とはいえ、多機能トイレを設置、通勤型ながらトイレ不安の解消や快適性にも配慮した。


さらに、空気清浄器(プラズマクラスター)もあり、淀みがちな車内の空気をさわやかにする対策を施した。車内ニーズが高くなっているインターネット利用をよりスムーズにするため、Wi-Fiアクセスポイント搭載のほか、クロスシート使用時には、窓下にあるAC100Vコンセントの利用、ペットボトルや缶飲料を置けるホルダーを前の座席背部に設置など、従来の特急車両にしかなかった設備も付加している。


通勤電車といえば車内の中吊り広告が特徴であり、楽しみにしている人も少なからずいるであろうが、40000系では今回登場の2編成では全廃した。そのかわりデジタルサイネージを全面採用。最近では、ドア上部に設置している車両が各社増えつつあるが、40000系では、それに加えて元々中吊り広告がある位置にデジタルサイネージを設置した。各地の観光列車(「リゾートしらかみ」「リゾートビューふるさと」など)では、よく見かけるものだが、通勤型では初の試みではないだろうか?どのような反響があるのか興味深い。

 

クロスシート時にはコンセント、ドリンクホルダーを利用できる。中吊り広告を廃し、デジタルサイネージを設置したのも新しい

■秩父から横浜まで! 座席指定列車「Sトレイン」登場


2013年春に副都心線と東急東横線がつながり、西武線沿線から横浜へ乗り換えなしに行けるようになった。しかし、長時間乗車にもかかわらず、車両はロングシートのみで快適というにはイマイチだったので、今回の座席指定料金が必要な着席サービス列車「Sトレイン」誕生は、大きな話題となっている。


目玉は、土休日のみ運転の西武秩父と元町・中華街駅を結ぶ列車。2時間を越えるロングランで、横浜付近から秩父への行楽、西武線沿線からの横浜へのお出かけが人気を呼びそうだ。平日は、所沢と有楽町線豊洲を結ぶ「通勤ライナー」に変貌し、保谷、石神井公園といった、従来レッドアローが停車しなかった駅から飯田橋、有楽町といった都心部へのラクラク通勤が可能になった。

とはいえ、まだまだ試行段階なので、運転本数は極めて少ない。利用者の反応を見ながら対応して行くことになろうが、西武1社ではなく、東京メトロ、東急との列車ダイヤ調整なども伴うので、どんな動向になるのか注視したい。


今のところ特別仕様車といった感じがぬぐえない40000系2編成の登場だが、諦め気味だった通勤電車に風穴を開けた意義は極めて大きい。関西に比べて直接の他社との競争が少ないと言われ続け、のんびりマイペースで走っていた関東の私鉄各社。現状のままでは、他社沿線や都心部への流出による郊外の過疎化、少子高齢化の進行で乗客減がどんどん進むという危機感もあるようだ。鉄道利用者としては、魅力的な通勤電車の登場は大歓迎であり、「鉄道新時代」の新型車両乗車を楽しみたいものである。

取材協力=西武鉄道

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野田隆

1952年名古屋生まれ。長年、高校で語学を教える傍らヨーロッパと日本の鉄道紀行を執筆。2010年、早期退職後、旅行作家として活動中。著書に『テツ道のすゝめ』『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』『テツはこんな旅をして...

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