「男性保育士に女児の着替えをさせないで」議論から見えた男女平等までの道のり

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田中俊之

 

先日話題を集めた『男性保育士の女児担当外しは性差別? 熊谷俊人・千葉市長の発言で議論』というトピックは、女性中心に役割分担されていた職場で、ようやく男性もその職務を担うようになってきたなかで起きた問題。一億総活躍社会、女性の働き方改革、といったスローガンが叫ばれるなか、理念としては男女平等であるべきことを誰もが理解していながら、身近な現実としては、男性に対する抵抗感が依然としてあるのだ。

 

 

■男女が同じように就労し“力を合わせて”働くべき

 

なお、このような問題は日本に限った話ではなく、男女平等の達成度が高く福祉や教育の先進国とされている北欧のスウェーデンにおいても同様に発生している。すべての職業において男女が半々になるということは、世界的にも実現していないのだ。

 

性については、犯罪から我が子を守るという観点から、保護者が敏感になるのはある程度しかたない側面があるので、男性保育士を増やす際には保護者が安心できるよう十分な配慮が必要である。ネット上で話題になることは、センセーショナルな内容に注目が集まりやすく、世間一般の共通認識とは外れていることが少なくないので、話題になったことを親の代表意見として簡単に捉えるべきではない。情報を発信する側も話題にするために、ある程度意図して極端な意見を発信している。そこに現実とのズレが生じるのは容易に想像できることだろう。

 

一例として千葉市で制定された条例を引くと、教育分野においても男女の差別を禁じ、子育てや介護の分野において、男女が同じように就労し、職場で“力を合わせて”働くべき、ということが、10年以上も前に定められている。今回のニュースの報じられ方からも、この条例の理念が浸透しているとは考えにくい。疑問を持った人たちを含めて、もっと多くの人に広く理解されてほしいと願うばかりだ。

 

ネットにあがってきた不安は、男性保育士がまだ少数で彼らの実際をイメージしにくいことからも、過剰になっているように感じられた。今回のようなケースは男女平等を進める上では避けて通れない問題であり、「男女平等における役割分担」についての議論が深まるきっかけとしては、意味があったと言えるのではないだろうか。

 

男女共同参画社会の目標は「男女平等の達成、性別にとらわれない多様な生き方の実現」である。女性の活躍ばかりが注目される現代だが、従来、女性ばかりだった職場に男性が入っていくことは、とりわけ「性別にとらわれない多様な生き方の実現」という点で重要だということを知ってほしい。

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田中俊之

田中俊之

1975年、東京都生まれ。武蔵大学社会学部助教。博士(社会学)。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。単著 『男性学の新展開』(青弓社)、『男がつらいよ―絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)、『...

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