テーマパーク直結の「専用IC」設置で高速道路が変わる!

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国土交通省が今年4月から、高速道路とその近くにある遊園地やアウトレットモールなどを直結させる専用IC(インターチェンジ)の設置を認めるというニュースがあった。具体的には千葉県の東京ディズニーリゾート、大阪府のユニバーサル・スタジオ・ジャパン、三重県の三井アウトレットパークジャズドリーム長島などを想定しているとのこと。いずれも混雑時には近くの出口周辺の本線から駐車場まで渋滞が続き問題になっていたそうだ。

 

高速道路のICは、これまでは国や高速道路会社が計画し、費用も負担していた。それが新しいルールでは、遊園地やアウトレットモールなどを運営する民間企業がICの設置を提案し、国の審査をパスすれば作ることができるという。その代わり、施設側にも集客のメリットがあることから、建設費の一部を負担してもらうつもりだそうだ。

 

このニュースを見て、東京生まれで現在も東京に住む筆者は、東京メトロ銀座線の三越前駅を思い出した。三越前。駅前に三越があることが誰にでも分かるこの駅は、江戸時代初期に事業を始めたデパート界の老舗中の老舗、三越が建設費用全額を負担することで、1932(昭和7)年に開業したものだった。後に銀座線と呼ばれることになるこの地下鉄を当時建設していたのは東京地下鉄道という民営企業だった。東洋初の地下鉄の建設には想像以上の費用が掛かり、資金難に陥っていた。その噂を聞いた三越が、日本橋本店近くの駅の設置費用を負担したのだ。もちろん改札口から伸びる地下通路は、そのまま日本橋三越本店の地下売り場に直結していた。さらに銀座線の他の駅では、壁にラインカラーであるオレンジの帯が入っているのに、三越前だけはワインレッドの三本帯になっており、柱には大理石が使われていた。

 

ここまで凝った作りではないけれど、沿線施設が費用を負担した駅は他にもある。たとえばJR九州鹿児島本線の神村学園前駅は、甲子園球場で行われる選抜高校野球大会で準優勝したこともある神村学園と、この学校が位置するいちき串木野市が費用を出し合って、2010年に開業した。スポーツ施設などでおなじみのネーミングライツ、つまり元からあった施設にあとから会社名などを付ける例なら、道路にもある。関東地方在住のクルマ好きなら、MAZDAターンパイク箱根がおなじみだろう。

 

これらに共通しているのは、鉄道や道路が民営企業であること。だから容易に名前を変えることができたのかもしれない。でも日本の高速道路は長い間、日本道路公団が建設および管理を担当していた。公的な立場にある組織が個別の企業の宣伝を行ったりするのは、たしかに好ましくない。しかし日本道路公団は天下りや談合などさまざまな問題もあり、2005年に民営化された。その後もICについては公共施設であることを念頭に置いた設置がなされてきた。それがここへきて変わりつつあるということだ。

 

東京メトロ三越前駅やMAZDAターンパイク箱根は路線が短い。対する高速道路は、北は青森県から南は鹿児島県までつながっている。なのでたとえば「ジャズドリーム長島」という名前のICを見て、「これどこ?」と思う人がいるかもしれない。でもその施設直結のICとするなら、分からない人は利用しなければ良いわけで、さほど問題にはならないような気がする。

 

それよりも、施設が費用を出すからといって専用のICとはせず、少なくとも地元の住民は利用できるような構造にしてほしい。伊勢丹と経営統合した三越は、業績で見れば厳しい状況が続いているようだけれど、三越前駅は三越に行かない人も使うことができる。特定の施設のために作るICとはいえそこは公共施設、広い気持ちで利用者を迎えてほしいものだ。

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森口将之

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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