「在宅勤務禁止」は時代錯誤か、必然か?

ビジネス



IBMがこれまで採用してきた在宅勤務制度の廃止を、対象となる従業員に通告したという話題がありました。オフィス勤務の形態を選ぶか、退社を選ぶかを30日以内に決めるように求めているそうです。少し前には、米インターネット検索大手ヤフーが在宅勤務を禁じると発表し、その時も時代に逆行するなどと、ずいぶん批判されていたと思います。

 

 

このあたりをいろいろ調べてみると、例えばグーグルでは、在宅勤務などのリモートワークを禁止している訳ではないものの、実際に行われている比率はそれほど高くないようです。あえて推奨はしておらず、どちらかと言えばオフィス環境を整えることに力を注いでいて、オフィスで働く方が業務効率が良いのか、もしくは居心地が良いという結果なのかもしれません。

 

 

このように、テレワークの先進国と思われてきたアメリカの方が、これを見直す動きが増えてきていますが、ここで言われている理由は、異口同音に「一緒に仕事をするメンバーが離れた場所にいるのは、チームで成果を上げるには不向きだ」ということです。特に高度な仕事、チームで作り上げる仕事、イノベーティブな仕事では、その仕事をパートごとに切り分けることができないので、在宅勤務は不可能だということです。

 

 

確かに、チームで成果を上げるためには、例えばスポーツの団体競技であれば、個人練習だけで勝つことはできません。プロのようなレベルであっても、キャンプや合宿という形で寝食をともにして、直接顔を合わせて一緒に行動することで、チームとしての連携を深めていきます。場を共有していれば、ちょっとした行動観察や雑談の機会なども含めて、直接コミュニケーションをとる頻度は確実に多くなります。これが重要だということは十分に理解できます。

 

 

一方、日本では、働き方改革の流れもあって、在宅勤務やテレワークを進めようという動きが顕著になっています。ちなみに、アメリカのヤフーは在宅勤務禁止を宣言しましたが、日本のヤフージャパンでは、「どこでもオフィス」というリモートワークの制度があり、他社の模範になる先駆的取り組み企業として、総務省から表彰されています。日本IBMも同じく総務省の認定を受けています。

 

 

他にも、在宅勤務の回数を強制的に決めて実施するような企業が出始めていますので、オフィスに出社しない働き方は、日本ではしばらくの間は進んでいくのだろうと思います。現状ではメリットの方が大きいと捉えられているということでしょう。

 

 

ただ、これから先どうなっていくのかは、しっかりと見極めていかなければなりません。アメリカでの動きは、生産性が下がってきたとか、トラブルが増えてきたとか、何かしらの理由があっての見直しでしょうから、今後日本でも同じことが起こらないとは言い切れません。「在宅勤務禁止」が、状況を見誤った時代錯誤なのか、それとも必然として起こってくるものなのかということで、前者であれば、日本の働き方改革は良い方向に進み、後者であれば、ただアメリカの失敗例を追っかけているだけになってしまいます。

 

 

これに関する一つの示唆として、ヤフージャパンの人事担当の方が話していたことが、私は参考になると思っています。

 

 

まず、アメリカの場合は、比較的成果主義の度合いが強く、個人の役割も明確に定められていますが、それだけでは上手くいかず、チームワークを重視しなければならないと考えた時に、在宅勤務が弊害になると考えたのではないかということです。日本の場合はその逆で、チームワークはもともと得意なことであり、その上でもっと個人の才能が発揮しやすい仕組みを作ろうとして、テレワークや在宅勤務などという選択肢を増やそうとしています。アメリカと日本では、ベースにある雇用環境、社会環境が違うので、向かう方向も違うということです。

 

 

今回の「在宅勤務禁止」が時代錯誤なのか、それとも必然なのか、現状ではまだわかりません。ただ、私個人の思いとしては、教育レベルが高く、比較的真面目な人が多い日本であれば、テレワークなどの仕事環境は良い形で活かしやすいはずです。もちろん、対象とする仕事を区別する必要はありますが、人が仕事をする上で、制約条件は少ないに越したことが無いと思っています。

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小笠原隆夫

IT業界出身で現場のシステムエンジニアの経験も持つ人事コンサルタントです。 人事課題を抱え、社内ノウハウだけでは不足してその解決が難しい企業、100名以下から1000名超の企業まで幅広く、人事制度構築、...

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