【今週のTOKYO FOOD SHOCK】コメダ珈琲シロノワールがファンの心をつかむわけ

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citrus編集部から、いつもの乱暴なボールが飛んできた。

 

「『みんな大好き!』なコメダ珈琲ですが、なぜコメダはあんなに人気があるのでしょう。とりわけシロノワールは熱烈なファンも多く、身の回りでも大人気です。名古屋の喫茶店文化の話などもからめて、書いていただければ!」

 

連載タイトルに【TOKYO】と入れたばかりのコンテンツで、早くも名古屋の話をぶっこんでくださるその彼方に、絶大なる信頼感がすけて見えて身震いするわけですが、確かに名古屋の喫茶店文化は有名な「モーニングサービス」も含めて、少し不思議なところがあります。ちょっと整理してみましょう。

 

 

■「元祖」問題は定説が正しいとは限らない

 

名古屋をはじめとした中京圏の喫茶店に特徴があることは、ご存じの方も多いでしょう。特徴的な「文化」や「メニュー」の周囲では、「元祖」「本家」を巡って紛糾することがあります。言うまでもなく、喫茶店の「モーニングサービス」も例外ではありません。愛知県発祥説や広島発祥説など複数の説が喧伝されていますが、こうしたケースでは「たまたま時代の趨勢として同時多発だった」とか「声が大きいものが勝つ」という例も少なくありません。

 

確かに名古屋が「モーニング」で有名なのは誰もが認める事実ですし、そのイメージは20年ほど前の時点で、すでに全国の共通認識でした。例えば食専門誌の『dancyu』の1996年7月号では「さすが名古屋ならではの名物「小倉トースト」の信実に迫る」という特集を組んでいます。同年には一定の認知を得ていたようで、比較的情報感度の高かった週刊誌などが「名古屋喫茶店事情」といった特集を次々に組むようになりました。

 

その後、「名古屋=モーニング」という認識は地方でも進みます。例えば、俳優・大泉洋の出世作となった北海道ローカルのバラエティ番組『水曜どうでしょう』(※)でも、2001年には名古屋出身のディレクターの実家である喫茶店で、小倉トーストを取り上げた「早食い対決」が企画されています。この頃には、東京のメディアを介さずとも「名古屋の甘いものモーニング」は全国区になっていたのです。

※1996年から北海道のローカル局北海道テレビ放送(HTB)で放送されていた旅を中心としたバラエティ番組。熱烈なファンが全国におり、現在もローカル局などで再放送されている。

 

 

■過剰に進化する名古屋モーニングの象徴

 

今回のお題である「シロノワール」は1977年のコメダ珈琲本店オープンとともに生まれています。まずは地元で口コミが広がり、その後、コメダ珈琲が全国へ店舗展開する過程で、シロノワールも熱烈なファンを獲得していきます。

 

その口コミのエネルギーとなったのが、「おいしさ」に加えて温かいデニッシュと冷たいソフトクリーム。そういえば小倉トーストも、「バターの塩味とあんこの甘さ」(前出の『dancyu』1996年7月号)と、そのギャップが注目されていました。ただし、名古屋のモーニング文化は発展する過程で、過剰に進化したきらいがあります。

 

例えば週刊誌などは、過熱するサービス合戦についておもしろおかしく取り上げます。

 

「“名古屋モーニング戦争”に仰天だがや!」(『女性自身』(1996年11月19日号)

「名古屋人の舌「究極の美食」かゲテモノか 岐阜のモーニングサービス~茶碗蒸し付き、日替わりなど過剰なモーニング合戦」(『AERA』1997年11月03日号)

 

完全にキワモノ扱いです。それでも話題になれば人は興味を示します。知ってもらったところで、今度は「名古屋モーニング」に興味を持ったお客を自店のファンにしなければなりません。サービスはますますエスカレートします。ドリンク代のみで、卵やトーストがついてくるのは当たり前。次第次第に「サンドイッチ+サラダ」という組み合わせが定番化し、うどんを提供したり、「パン食べ放題」を打ち出す店なども登場しました。

 

そんな名古屋モーニングの象徴が「ギャップ」×「インパクト」を地元に向けて訴求し、定着したシロノワール――。だとするならば、このあたたくて冷たいデザートが次々に全国にファンを拡大しているのも道理なのかもしれません。

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フードアクティビスト

松浦達也

フードアクティビスト/編集者&ライター 『dancyu』などの食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオでの食トレンド...

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