ネットでコンテンツの消費はするが、発信はほとんどしない日本の子どもたち

ビジネス

ニューズウィーク

日本の子どもたちはスマホを利用することはできるがコンテンツ発信は苦手 GeorgeRudy-iStock.

<音楽や動画などのデジタルコンテンツを発信する生徒の割合で、日本はOECD加盟国中なんと最下位。ネット利用はコンテンツ消費だけで、デジタル機器を使った創作活動はほとんど行わない>

 

インターネットやデジタル機器が世界中に普及した現在、誰でもネット上で自分の創作物を発信し、それを見聞きした人からフィードバックを得ることができる。

 

単純労働によってモノを大量生産することが主流だった時代は終わり、21世紀の世界では斬新なイノベーションが求められている。子どもの時期からネットを活用して、自分の創作物を世に問う経験を持つことはとても重要だ。

 

OECDの国際学力調査「PISA 2015」では、15歳の生徒に「学校外において、デジタル機器を使って、自分の創作物(created contents for sharing)をネットにアップするか」と質問している。創作物の例として調査票では、音楽、詩、動画、コンピューター・プログラムなどが示されている。

 

【参考記事】世界トップの教育水準を労働生産性に転換できない日本の課題

 

回答の選択肢は、(1)全く・ほとんどしない、(2)月に1・2回、(3)週に1・2回、(4)ほとんど毎日、(5)毎日。(3)~(5)を「週1回以上」にまとめて、3つのカテゴリーの回答分布を国ごとにみると、<図1>のようになる。


 

「週1回以上」の比率が高い順に46カ国を並べたが、日本はわずか11.4%で最下位。日本の青少年は、ネットで創作物を発信する頻度が世界で最も少ない。全体の8割が、全くないしはほとんどそれをしていない。彼らはよくスマホを眺めているが、情報を受け取るばかりで、自分から創作して発信する姿勢には欠けているようだ。



デジタル機器の用途は国によって異なる。日本の生徒は、創作物を発信する頻度は低いが、コンテンツをダウンロードしたり、オンライン・ゲームをしたりする頻度は高い。<図2>は、横軸に「学校外で週1・2回以上」創作物を発信する割合、縦軸にオンライン・ゲームをする割合をとった座標上に46の国を配置したグラフだ。

 

<図1>とは裏腹に、パソコンやスマホ等でゲームをする頻度は日本が最も高い。一概にとがめられることではないが、コンテンツを消費するだけの立場からは、創造性(クリエイティビティ)は生まれない。

 

15世紀の印刷術の発明は、活版印刷の発明者の名前を取ってグーテンベルク革命と言われるが、インターネットの出現は「ポスト・グーテンベルク革命」と形容される(潮木守一・名古屋大学名誉教授)。一部の人間だけでなく、誰もが手軽に情報を発信できる技術革新だ。その恩恵を、もっと生産的な方向で利用するように子どもたちを導いていきたい。

 

【参考記事】教育で貧困の連鎖を断ち切る、カンボジア出稼ぎ家庭の子ども支援

 

文部科学省の次期学習指導要領の目玉は「アクティブ・ラーニング(AL)」だが、AL形式の授業では、生徒が創作物を積極的に発信し、外部のフィードバックを反映して洗練させていく活動があっても良いのではないだろうか。生徒のやる気を高めることができるはずだ。

 

ちなみに日本の生徒は、スマホジャンキーでもネット中毒でもない。13~15歳のスマホ所有率は46%で、主要国の中では最も低い(内閣府『わが国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年)。1日6時間以上ネットを使う15歳生徒の割合も、45カ国中43位だ(OECD「PISA 2015」)。

 

重要なのはスマホの使用をやみくもに制限することではなく、生産的な使い方をするように指導することだ。デジタル機器をうまく使えば、学校教育の効果を飛躍的に高めることも可能だろう。

 

<資料:OECD「PISA 2015」>

 

文:舞田敏彦(教育社会学者)

この記事が気に入ったらいいね!しよう

ニューズウィークの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

ニューズウィーク

ニューズウィーク

国際ニュース週刊誌『Newsweek』は米国にて1933年に創刊。その日本版として86年に創刊されて以来、『ニューズウィーク日本版』は、世界のニュースを独自の切り口で伝えることで、良質な情報と洞察力ある視点とを提供...

ニューズウィークのプロフィール
ページトップ