最近の若者は敬語を使いすぎ? 時代とともに「変化する敬語」とは?

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『新・敬語論 なぜ「乱れる」のか(NHK出版新書)』(井上史雄/NHK出版)

「最近の若者は敬語を使わない」とは先輩方からのお決まりのお説教だ。確かに、自信を持って敬語を使っているという若者はあまり見かけない。そもそも、10代のうちは、せいぜい「です」「ます」の丁寧語が使えれば事足りる気がする。20代、30代になり、丁寧語以上の敬語が要求され、そこで初めて使えない自分に気づいて慌てるのだ。丁寧語以上の敬語とは、尊敬語、謙譲語のこと。ときどきメディアのコラム記事などでも、知らなかったら恥ずかしいという論調で、「正しい」尊敬語と謙譲語を教えてくれる。読むたびに自分の非常識さ加減に悲しくなるが、やはりちゃんと使えるようになりたいとは思う。

 

『新・敬語論 なぜ「乱れる」のか(NHK出版新書)』(井上史雄/NHK出版)は、敬語がどのように変わってきたかを解説した本。ただ単に正しい敬語はこれだと突きつけるのではなく、現状の敬語がどのように使われているかに焦点を当てた内容となっている。著者の姿勢は、「多様性を認めれば、世の中はすごしやすい」「他人の敬語の間違いを厳しく糾弾するのもやめよう」とこの上なく優しい。

 

そもそも、敬語が変化するという視点は意外だ。言葉に流行りすたりがあるのは想像できるが、敬語の「正」と「誤」も時代によって変わりゆくものだったとは。なんだ、敬語ができないくらいで悲しくなる必要はなかった、と安心したところで、現状の敬語を見ていこう。

 

 

 

■敬語を使いすぎる傾向

 

1、三重敬語

敬語には相手を高める尊敬語と、自分がへりくだる謙譲語がある。ここ最近の傾向は、謙譲語が使用の伸び悩みを見せる一方、なんと、尊敬語が勢力を伸ばし用法を拡大中。以前では使われなかった文脈でも使われるようになっている。そのため敬語全体としては、以前より使われすぎの傾向にあるという。

 

例えば、「鈴木さんはおいでになられますか」。これは「おいでになられる」が「おいでになる」と「られる」の二重敬語となっているので、本来は誤用だ。敬語は重ねて使ってはいけないのだ。しかし、この言い方が気に障るかを調査したところ、約7割以上の人がより丁寧な感じがするのでOKと回答。そもそも「おいでになる」は、語源をたどれば「御」と「出る」なので、「おいでになられる」は三重敬語と見ることもできる。

 

しかし、丁寧ならばすべて許されるのかというとそうではない。「ご出発になられる」「ご調査された」は丁寧すぎるという理由でNOという意見が多い。「御」と「れる・られる」の明らかな二重敬語は支持されていないようだ。二重敬語はダメだが、三重敬語はOKというのは面白い。

 

 

2、物にも敬語

また最近では、話している相手の所有物にも敬語を使う傾向が高まっている。本来の敬語は、話している相手本人や、話に出てくる目上の第三者に使うもの。しかし、それを物にも適用するようになってきたのだ。例えば、「お車が故障なさいました」「お帽子が古くなられました」などである。親しい間での会話ではなく、接客などの仕事上で使われているようだ。実際に生命保険外交員への聞き取り調査では、こうした言い方を日頃からしているという回答が得られている。

 

 

 

■背景は利き手への配慮

 

こうした敬語を使いすぎる傾向は、コミュニケーションが聞き手に配慮する形に変わってきていることが原因だ。相手をちょっと持ち上げて、いい気分にさせる話し方が求められているのだ。

 

かつての世の中には、話者の片方が敬語で、もう一方は敬語なしという光景が確かにあった。身分や年齢といった縦の序列がはっきりしていたからだ。今は貧富の差や会社での先輩後輩はあれど、階級的な身分制度や、徒弟制度的な働き方は少なくなった。そうなると、固定された型が取り払われるので、会話の語調は流動的になる。昔に比べると横並びに近くなった世の中といえる。だがそうはいっても、やはり立場が上の相手は少し持ち上げておこうという意識が働くので、敬語をさまざまに取り入れた会話文が出来上がるようだ。

 

敬語の使いすぎは、現代社会に複雑なコミュニケーションが求められていることの表れ。もしかして私たちは、型通りの敬語を覚えるよりも難しいことをやっているのかもしれない!?

 

文=奥みんす

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