【小物王のつぶやき】7インチの「シングル盤」には、新曲をモノとして手にする喜びがあった!

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カルメン・マキの新譜が7インチのアナログ盤で発売される。ライブで大事に歌い続けられてきた名曲「デラシネ」と「望みのない恋」がついにスタジオ録音され、シングル盤として発売されるのだけど、その媒体として選ばれたのが、かつて、アナログ盤の時代に「シングル」と呼ばれていた、あの大きさのレコードだ。

 

 

そのプロモーション用のショートフィルムがYouTubeにアップされているので、まずは、それを見て欲しい。

 

 

発売は3月11日からgalaboxで、3月22日からディスクユニオンで発売される他、リリース記念のライブも行われる。詳細は、galaboxの特設ページを見て欲しい。

 

 

■シングル盤って「ドキドキしたなあ」

 

このシングル盤の詳細を聴いた時に思ったのが、「シングル盤ってドキドキしたなあ」という事。かつて、まだCDが登場する前、アナログ盤の時代、多くの人が「レコードを買いにいく」と言って買っていたのはシングル盤だったのだ。特に邦楽に関しては。というか、そもそも、レコードはあまり買うものじゃなかった。

 

もちろん、いつの時代もマニアはいて、私も中学生の頃から、せっせとお小遣いを貯めて、当時「アルバム」と呼ばれていたLPレコードを買っていたのだけれど、それは、洋楽やシンガーソングライターの音楽が好きだったからで、いわゆる流行歌は、基本的にはラジオや有線放送、テレビで流通していて、それを聴いた人の中で、どうしてもその曲を繰り返し「良い音」で聴きたいという人がシングル盤を買っていたのだ。

 

私たち、お金のない子供は、流行歌については、ひたすらラジオから録音していたから、シングル盤を買うというのは、よほどの事だった。例えば、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」のシングルを中一の冬に買ったのだけど、あの曲は長くて、ラジオは中々フルコーラスをかけてくれず、また、ギターの練習をしたいと思っていたので、簡単に繰り返し聴けるレコードが良いと思ったから。面倒くさいが、そのくらい理由がないと、レコードは買えないものだったのだ。それでも、どうしても欲しい曲が出てくると、買ってしまうのだけど、今思うと、LPレコードに比べると小さいとはいえ、シングル盤の7インチ、約18cmの直径というのは、ジャケット写真にしても、それなりの大きさがあって、その歌手のグッズを買っている感じが強かったのだと思うのだ。

 

 

■CDの登場で消えていった「シングル盤」の意味

 

CDシングルが出た時、そのコンパクトな感じは悪くなかったけれど、グッズとしての魅力が明らかに後退していたことにガッカリしたことも覚えている。LPレコードがCDになった事については、A面B面をひっくり返さずに済むようになったのは、むしろ嬉しい事だったし、何より、曲の頭出しが簡単にできる事、カセットのようなノイズがない事に喜んで、CDを歓迎していた。

 

しかし、シングル盤については、A面B面がない事が寂しかった。その後、シングル盤は普通のCDサイズで発売される事が多くなり、ミニアルバムとの区別が付かなくなり、そもそも「シングルカット」という言葉もなくなり、そうこうしている内に、音楽はネットで1曲単位で買えるようになってしまった。CDはとっくにアルバムを買うのが当たり前になって、流行歌とよべるような歌は、どんどんなくなって、「シングル盤」の意味は、握手券とか特典DVDとかとのカップリングのためのものになっていった。

 

 

■新曲をモノとして手にする喜び

 

 

そういう時代に、欲しいと思えるシングル盤が、しかも初録音音源の曲が新譜として出るというのは、「曲」を流通させる手段として、とても真っ当なことのように思えたのだ。まず、アナログ盤は録音の状況をそのまま記録することに於ては、デジタルよりも優れている。今回のように

 

 カルメン・マキ vocal

 桜井芳樹 guitar

 清水一登 piano

 西嶋徹  contrabass

 椎野恭一 drums

 

という、凄まじいと言っても良いほどのミュージシャンが揃って、ライブの空気を感じさせる演奏を聴かせているのだから、できる事ならアナログ盤が良いに決まっているのだ。

 

そして、新曲をモノとして手にする喜びを感じる為にも、配信よりも盤があった方が嬉しい。シングル盤としてのCDにあまり魅力がない以上、ジャケットも大きく、かといってアルバムほどには場所を取らないシングル盤は、コレクターズアイテムとしても嬉しいのだ。2016年末のムーンライダーズのライブでプレミアムーンシートのお土産に配布されたのも未発表音源のシングル盤だった。そういうギフト的なアイテムとして、サイズ感が丁度いいのもシングル盤なのだ。

 

最近は、パソコンに音を取り込む為の端子がついたコンパクトなレコードプレイヤーが安価で入手できる。時々、アナログのレコードを聴くために、1台持っていたい時代になってきている。お気に入りのシングル盤を、そっとプレイヤーに載せる楽しみは、音楽が気軽に手に入るようになったからこその新しい趣味になるのではないかとまで思っている。アナログのシングル盤での新曲発表が当たり前になると、また音楽の聞き方に幅ができるはずなのだ。

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小物王

納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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