【今週の大人センテンス】50歳の三浦知良が示す、続けることのカッコよさ

話題

写真:松岡健三郎/アフロ

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第48回 前人未到の領域を次々と切り開いてきた

 

「大事なのは、50歳だからすごいとか、これまでの実績や、何試合出たかということよりも、いま、毎日、何ができているのか」by三浦知良

 

【センテンスの生い立ち】

2月26日に2017年のシーズンが開幕した明治安田生命J2リーグ。この日は、横浜FCに所属するキング・カズこと三浦知良選手の50歳の誕生日だった。カズは松本山雅FCとの開幕戦に先発出場。史上初の「50歳Jリーガー」の誕生である。2月23日発売の雑誌「Number」922号(文藝春秋)は、50ページ以上にわたって三浦選手を特集。その中のロングインタビューでは、彼がサッカーを続けていることへの思いが熱く語られている。

 

【3つの大人ポイント】

・「とにかく長く現役を続けること」が目的ではない

・年齢に縛られない大切さと難しさを教えてくれている

・同年代はその姿に励まされつつ反省せざるを得ない

 

高校を8ヵ月で中退し、プロのサッカー選手になる夢とともに単身ブラジルに乗り込んだのは35年前(15歳)。JリーグがスタートしたシーズンでMVPを獲得し、表彰式に真っ赤なスーツで登場したのは23年前(26歳)。フランスW杯の日本代表メンバーから外れて帰国したのは19年前(31歳)。オーストラリアのシドニーFCから帰国し、以前も在籍していたJ2の横浜FCに復帰したのが11年前(38歳)。そして、そのまま横浜FCで40代を過ごした三浦知良選手は、50歳を迎えた今年も開幕戦に先発出場しました。

 

開幕戦の日程がちょうど彼の50歳の誕生日というところにも、彼の並々ならぬスター性を感じます。「50歳Jリーガー」誕生の瞬間を見ようと、2月26日の「横浜FC対松本山雅FC」戦が行なわれたニッパツ三ツ沢球技場は、1万3244人の観客で超満員。メディアの注目度も極めて高く、外国メディアを含めて200人以上が取材に訪れました。

 

試合は1-0で横浜FCが勝利。カズはゴールこそ決められませんでしたが、後半20分までプレーして勝利に貢献しました。試合後の記者会見に現われたカズが着ていたのは、この日のために特注したピンクのスーツ。あの服を彼ほどダンディに着こなせる人は、そうはいません。会見では「(会場に)入ったとき、ファンの人におめでとうと言われて、試合前ですけど、泣きそうになっちゃいましたね」「(続けてこられたのは)サッカーが好きだ、ということに尽きると思う」などと語りました。

 

50歳でプロのサッカー選手を続けているというのは、すごいとか立派とか、そんな言葉ではぜんぜん称えたことになりません。50代の方は、自分とカズが同じ年代ということが信じられるでしょうか。若い方は、周囲にいる50代の男性とカズとのあいだに共通点を見つけることができるでしょうか。もちろん、彼が50歳の今も現役を続けていられるのは、日々の並外れた努力と、本人も言っているように並外れたサッカー愛の賜物です。

 

カズの凄さは、50歳で現役を続けていることだけではありません。15歳で単身ブラジルに渡ったときから、サッカー選手として、日本のプロサッカー界の象徴として、次々と新しい世界を切り開き、未知の扉をこじ開け続けてきました。彼がいなかったら、Jリーグは存在しなかったかもしれません。それは大げさとしても、今のように海外のチームで多くの日本人選手が活躍するという状況は、おそらく訪れていなかったでしょう。

 

彼は、どんな思いで50歳を迎えようとしているのか、サッカー選手としてどんな道を歩んできたのか。2月23日に発売された雑誌「Number」(文藝春秋)が、三浦知良選手を大特集。タイトルは「三浦知良、50歳 まだやるよ。」。本人へのロングインタビューあり、カズと中田英寿氏との対談あり、岡田武史氏へのインタビューあり、上半身裸のセクシーショットもたっぷりありと、充実の内容です。

 

「[誕生日目前独占インタビュー]たったひとつのことを続ける尊さ。『三浦知良 50歳のキックオフ。』」(文・一志治夫)では、サッカーに対する彼のさまざまな思いが語られています。どこを切っても名言ですが、とくに印象的な発言をいくつかご紹介しましょう。

 

「大事なのは、50歳だからすごいとか、これまでの実績や、何試合出たかということよりも、いま、毎日、何ができているのか、どういう生活をしているのか、あるいは、どういう気持ちでサッカーをやっているのか、情熱をもってトレーニングができているのか、何をどう続けていられるかです。」

 

「僕は人生の中で、絶対に大切にしなきゃいけないものがあると思うんです。簡単に手放してはいけないもの。お金をたくさん積まれても、譲ってはいけないもの。かけがえのない自分の人生をかけてやってきた、一番得意なもの。僕にとってそれはサッカーだったから、ただただ続けてきた。たったひとつのことを続けることって尊いことだと思うんです。」

 

「ただ僕は、15歳の時から切れずに練習を続け、ここまで休まず来たんです。継続してきたから、いまがある。それに尽きるんじゃないですか。50歳はその継続の結果に過ぎないし、いまはまだ、この先へと続く通過点だと思っています。」

 

どの言葉からも、カズの覚悟やプロとしての自負、まだまだやるという意欲が伝わってきます。「練習にしてもみんなと同じようにできなければ嫌だ」「ピッチに立てば、年下の選手とまったく同等」とも。言うまでもなく彼は、とにかく長く現役を続けることを目指しているわけではありません。ただ「自分自身に情熱があって、練習でいいプレーができている限りは続けていたい」と言っています。

 

あまりにカッコよすぎて、あまりに崇高すぎて、見習おうと思うこと自体、けっこう勇気がいります。しかし、とくに50代にとっては、同年代にカズがいるというのは、とても幸運なこと。カズの活躍を見て大いに励まされ、たくさんの刺激を受け、心身ともにたるみ気味な己の生活を反省しましょう。「もう歳だから」なんて言ってる場合じゃありません。

 

意識しているかどうかはさておき、50代になると、過去の実績にすがったり、仕事に惰性で取り組んだり、小さな権力をやたら振り回したりしがちです。カズの言葉を噛みしめ「いま、毎日、何ができているのか、どういう生活をしているのか」、そして、どういう気持ちでやっているのか、情熱をもってできているのかを己に問いかけたいもの。私たちはカズのように偉大な存在になることはできませんが、自分のできることをがんばることが、カズのプレーや発言に感動させてもらっているものとしての、せめてもの務めです。

 

きっとカズは、まだまだ現役を続けてくれるでしょう。去年は20試合に出場して2得点を上げました。50歳での得点シーンも、必ず見せてくれるに違いありません。横浜FCの試合は、3月5日が対V・ファーレン長崎(トランスコスモススタジアム長崎)、12日が対ザスパクサツ群馬(ニッパツ三沢球技場)と続きます。注目しましょう!

 

 

【今週の大人の教訓】

それぞれの状況で、とにかく自分を鼓舞しないと何も始まらない

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

石原壮一郎

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

石原壮一郎のプロフィール
ページトップ