F1マシンの多彩なネーミング。戦略的なメルセデスに脈絡のないフェラーリ、ロマンチックなザウバー…

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今年のメルセデスAMGのマシンは「EQ Power+(イー・キュー・パワー・プラス)」というネーミングに

4年連続のタイトル獲得を狙うメルセデスAMGの2017年型F1マシンは、F1 W08 EQ Power+と名付けられた。16年型はF1 W07 Hybridだった。アルファベットの「W」に数字を組み合わせるネーミング手法に変わりはないが、「Hybrid(ハイブリッド)」が「EQ Power+(イー・キュー・パワー・プラス)」になっている。なぜか。


市販車のブランドネームを先取りしたのだ。メルセデス・ベンツは2016年9月に開催されたパリ・モーターショーで、電気自動車のコンセプトカー「Generation EQ」を発表した。と同時に、メルセデス・ベンツとそのプレミアム&ハイパフォーマンスブランドであるAMGが送り出す電動車両には、ぞれぞれ「EQ Power」「EQ Power+」のブランド名を付けると発表した。


EQは「Electric Intelligence(エレクトリック・インテリジェンス)」を意味するそうで(なぜインテリジェンスなのに「Q」なのだろう……)、メルセデス・ベンツのブランドバリューである「エモーション&インテリジェンス」から派生させたものだという。EQ Powerのブランドネームは、フェイスリフトを機にSクラスに追加されるプラグインハイブリッド車から付与されることになる。

EQ Power+は「エレクトリックブルー」と呼ぶラインがフロントからリアにかけて流れるのが特徴


F1マシンがハイブリッドシステムを搭載していることを利用し、F1と市販モデルでネーミングに共通性を持たせて、新規に導入するブランドの浸透を促すのが狙い。と同時に、F1と市販車で開発に取り組んでいる技術が密接な関連を持っていることをアピールする狙いだろう。


EQ Power+のネーミングが付与されたのに合わせ、メルセデスAMGの2017年型マシンは、「エレクトリックブルー」と呼ぶラインがフロントウイングからサイドポンツーンの後部にかけて施された。ジェネレーションEQに用いたブルーの引用で、電動化技術のイメージをこれまで以上に鮮明に表現している。

 

 

■何かを記念したネーミングが好きなフェラーリ


ネーミング手法が変わったのはマクラーレンも同様で、2016年はMP4-31と呼んでいたが、2017年はMCL32と呼ぶ。単純に、チーム名であるMcLarenの略である(詳しくはリンク先参照)。


フェラーリの2017年型マシンは、SF70Hと呼ぶ。SFはスクーデリア・フェラーリ(スクーデリアはイタリア語でチームの意味)の略。Hはハイブリッドを意味する。70は自動車メーカーとしてのフェラーリ創設70周年を記念したものだ。


脈絡なくネーミングが変わるのがフェラーリの特徴で、16年型はSF16-Hだった。ま、これは最新型の名称と近い。2013年はF138で、西暦2013年と搭載するV8エンジンの8を組み合わせたもの。2012年はF2012で、2011年はF150°イタリアだった。イタリア統一150周年を記念したネーミングである。2010年はF10(なぜかF2010ではない)。2009年はF60で、F1参戦60周年を記念した命名である。フェラーリは何かを記念したネーミングが好きと見える。


気の早い話だが、2018年型フェラーリのマシン名を推測すると、順当にいけばSF18-H、過去に用いた手法に戻ればF2018またはF18。それとも何かの記念に引っかけたネーミング? いずれにしてもFが付くのは間違いなさそうだ。

 

 

■チーム創設者の奥さんの名前まで…

 

今年のフォース・インディアのマシンは VJM10。VJMはチーム代表を務めるビジェイ・マリヤ(Vijay Mallya)に由来

記念ネーミングといえば、2017年の場合はウイリアムズもそうである。車名はFW40。FWはチームの創設者であるフランク・ウイリアムズの略だ。では、40は何かというと、F1参戦40周年を意味する。これまでの流れで命名すると、2017年型マシンはFW39となるはずだったが、1つスキップしてFW40にしたのだ。


チーム創設者あるいはチーム名のイニシャルを車名に用いるのは一般的なネーミング手法で、フォース・インディアがそう。彼らの2017年型マシンは VJM10と呼ぶが、VJMはチーム代表を務めるビジェイ・マリヤ(Vijay Mallya)から来ている。10は10作目ということだ。レッドブルの最新型はRB13、トロロッソの最新型はSTR12で、それぞれ、レッドブルの13作目、スクーデリア・トロロッソの12作目の意味。


F1参戦25年目の節目のシーズンを迎えるザウバーの2017年型マシンは、C36と呼ぶ。36は36作目(F1参戦以前に開発した他カテゴリーの車両を含む)の意味だが、Cはチーム名や創設者名が由来ではない。ザウバーというチームを興したのはペーター・ザウバーという人物だが、Cはペーターの妻、クリスティーヌの頭文字なのだ。うーん、ロマンチック。

 

チーム創設者の奥さま、クリスティーヌの「C」を頂いたザウバーのマシン。36作目なのでC36


F1参戦2年目のハースが送り出す最新型はVF-17と呼ぶ。17は西暦。VFの方にこだわりがある。ハースはアメリカに本拠を置く精密加工機械メーカーの創業者、ジーン・ハースが興したF1チームだ。VFは、ハースが興したハース・オートメーションの第1号マシンの名称がVF-1(Very First One、すなわち1号機の意味を兼ねたネーミング)だったことに由来。F1マシンの方はVery Firstではなく、Very Fastといったところか。ちなみに、VF-17の濃いグレーは、ハース・オートメーションの精密加工機械と同じ色である。


ルノーの2017年型、R.S.17のR.S.は、Renault Sport(ルノー・スポール)の略だ。
 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全...

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