難民化する老人たち――“悠々自適な老後”から程遠い、「年金」「時間」「仕事」が“ない”高齢者たちの現状

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ダ・ヴィンチニュース

世界のGDP(国内総生産)ランキングではアメリカ、中国に次ぐ3位となっている経済大国ニッポン。国が豊かであれば、そこで暮らす国民の心も豊かである、とは限らない。特に近年、高齢者は逆風著しい。「老老介護」で心身ともに疲れ果て、「オレオレ詐欺」の被害に遭い、老後資金・年金がむしり取られる。なんとも世知辛い時代となったものだ。

 

 

そんな生きづらさを抱える高齢者たちを丹念に取材し、まとめたものが『ルポ 難民化する老人たち(イースト新書)』(林美保子/イースト・プレス)だ。本書では「年金」「時間」「仕事」などが“ない”高齢者たちの現状を紹介している。どの老人たちも、かつて夢見たような「悠々自適な老後」からは程遠い。

 

 

突然だが、夫婦で“ゆとりある”老後を送るために月にいくら必要かご存じだろうか。本書曰く月35万円なのだそう。こんなに必要なのかと驚いてしまったが、一人頭にして月17万5000円。賃貸物件に住み、家賃・光熱費・通信費を差し引いて考えれば、妥当かもしれない。しかし、実際に高齢者が受け取る年金の平均額は35万円よりも少ない。そのため、早いうちから老後資金として貯金をしておくべきだという。

 

 

だが近年、状況は悪化の一途を辿っている。非正規雇用や離婚の増加、「消えた年金問題」などによって、生活保護以下の年金額で生活をしなければならない低所得者層が増えている。さらに、高所得者層でも注意が必要なのだそう。所得が高い人はもともと生活レベルが高い。年金だけで生活するようになっても、なかなか今まで送っていた生活レベルを落とすことができないのだ。

 

 

とはいえ、やはり年金が“ない”高齢者の現状は厳しい。具合が悪いのにお金がないため病院に行けない方がいる。さらに、自分の葬式代が出せないと自分の死後について思い悩む高齢者もいるそうだ。だが、「高額療養費制度」で医療費の一部を負担するのみで済んだり、場合によっては全額免除することができたり、生活保護受給者の場合は自治体が葬式代を出してくれたりすることも。そもそも制度を知らない、あるいは手続きが煩雑であきらめてしまう方も多いという。高齢者が安心して生活するために、“伝える”“手続きの簡略化”などできることはまだまだありそうだ。

 

 

また、本書ではフリーライター・カメラマン夫婦の例も記載されている。若いころはバリバリ働いていたという二人。しかし、年齢を重ねるにつれ仕事はなくなり、フリーランスの仕事ではまったく生活ができなくなってしまったという。加えて、ダンナさんがルーズな方で、年金の支払いが滞り「財産を差し押さえる」という通知書が届く。会社員であれば会社が代行してやってくれる年金・健康保険の手続き。フリーランスであれば自分でやらなければならない。めんどくさいからと後回しにして、そのまま忘れていた…では取り返しがつかなくなる可能もあるのだ。私自身もフリーライターの端くれ。改めてきちんと管理をしなければという思いに駆られた。

 

 

最後に、私が一番衝撃を受けた本書の一部を抜粋したい。

 

 

「私は死にたいの」
「なぜ死にたいんですか?」
「私が生きているおかげで子供たちを傷つけている。私が死んでしまえば、息子たちはやりたいことができるのに、息子は仕事を辞め、お嫁さんもほとほと疲れている。私自身もイライラして、つい息子たちに当たることがある。それが本当に嫌なの。だから早く死にたい」

 

 

経済大国・日本は、これまで懸命に生き、命をつないできた高齢者にこんな台詞を言わせてしまっている。この社会の歪みは放置していいものではない。何としても改善策を講じなければならない問題だ。そのために、現状日本で何が起こっているのか、それを多くの人が知る。これが改善への小さくも、大きな一歩になってくれると信じている。

 

 

文=冴島友貴

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