「ななつ星」に 「四季島」「瑞風」…クルーズトレインが続々と誕生する理由

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JR東日本の「TRAIN SUITE四季島」。名称のとおり全客室がスイートとなっている

今年5月、JR東日本の豪華列車「TRAIN SUITE四季島(トレインスイートしきしま)」が走り始める。一方JR西日本では、2015年に惜しまれつつ引退した豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス」を受け継ぐ存在として、「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」を6月から運行開始するとしている。

 

いずれも2013年からJR九州が走らせている「ななつ星in九州」の根強い人気を受けて生まれた列車と見て良いだろう。これらの豪華列車はクルーズトレインと呼ばれている。ななつ星in九州が走りはじめた3年前をクルーズトレイン元年とするなら、今年はクルーズトレイン飛躍の年と言えるかもしれない。クルーズトレインの生みの親は、現在JR九州の代表取締役会長を務める唐池恒二氏だ。同氏の著書「鉄客商売」によれば、クルーズトレインという呼び名も同氏が考え出したものだという。

 

ななつ星in九州は、ヨーロッパを走る豪華列車「オリエント急行」の日本版を実現したいという気持ちから生まれたという。しかしななつ星in九州とオリエントエクスプレスには大きな違いがある。

 

日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」。移動ではなく周遊を楽しむ点が新しい

オリエントエクスプレスは、他の多くの列車と同じように、始発駅と終着駅が離れており、移動することを楽しむ列車だ。しかしななつ星in九州はそうではない。博多駅を出発して、再び博多駅に戻ってくる。トワイライトエクスプレス瑞風は片道利用も可能となるようだが、四季島はやはり上野発・上野着だ。これは移動というより周遊という言葉のほうがふさわしい。だからクルーズトレインという名前を与えたのだろう。ではなぜ、ななつ星in九州は移動ではなく周遊になったのか。筆者は3つの理由があると考えている。

 

ひとつは列車のコンセプトが、九州を満喫してもらうことにあるからだ。ななつ星というのは九州にある7つの県を意味している。各県を走りながら、その土地の景色や食事などを楽しんでもらうための列車であり、最初からA駅とB駅を結ぶために生まれたわけではない。しかもななつ星in九州は、首都圏や関西圏、さらには海外からの観光客をターゲットとした。遠方からの観光客は、まず博多駅あるいは福岡空港にやってきて、多くは行きと同じルートで帰路に着く。それなら福岡空港にも近い博多駅発着としたほうが利用してもらいやすいと考えたのだろう。

 

そしてもうひとつ、唐池会長がJR九州で、長い間食堂部門に携わってきたことも大きいのではないかと思っている。レストランやカフェは、ゆったり時間を過ごすための場所だ。だからななつ星in九州も、A地点とB地点を早く結ぶことは考えず、数日間かけてゆっくり巡る周遊型になったのではないかと想像している。

 

クルーズトレインは料金が高いことでも知られている。しかしそこには、名所を散策し、土地の食材を味わい、老舗旅館に泊まるといったメニューがすべて含まれている。そしてこれを旅行商品として販売している。オリエント急行も鉄道会社ではなく、寝台車両を所有する「ワゴン・リ」という会社の企画だったというから、考え方は近い。こうしたメニューをゼロから組み立ててひと続きのスケジュールにしていくのは大変だ。特にクルーズトレインに乗る富裕層は多忙だから、おそらくコンシェルジュに一任するだろう。ななつ星in九州の場合は、そのコンシェルジュの役目をJR九州が担当したと言えるのではないだろうか。

 

JR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」。6月17日から運行を開始する

でも仮に、利用する富裕層の立場になったとしたら、九州は体験したから次は東北や山陰に、同じような列車で旅をしてみたいと思っても不思議ではない。そんな声がJR東日本やJR西日本の耳に届いて、「TRAIN SUITE四季島」や「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」に結実したのかもしれない。

今年の夏からは、3つのJRがクルーズトレインを走らせることになる。我々庶民には縁のない列車だけれど、良きライバルとして魅力を盛り上げていってほしいし、それによって我が国を訪れる外国人観光客がさらに増えるなら、日本人のひとりとして喜ばしいことだ。

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森口将之

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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