【中年名車図鑑】小林麻美、浅香唯のイメージと一線を画す「男の走り屋バージョン」

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大貫直次郎

名だたる国産メーカーには、ブランドを象徴する確固とした高性能モデルが存在する。日産のGT-R、ホンダのType-R、レクサスのF――、そしてスズキでは“ワークス”がその筆頭格だ。今回は「メーカー自身が手がけたレースマシン、レースチーム体制」を意味するサブネームの“WORKS”をつけた初代(1987年~)と2代目(1988年~)のアルト・ワークスで一席。

 

87年にデビューした初代アルト・ワークス。軽自動車初の「ツインカムターボ」として話題に

【Vol.11 初代/2代目スズキ・アルト・ワークス】


1980年代前半から中盤にかけての鈴木自動車工業、現在のスズキは、GMとの業務提携によって経営の安定化を図り、同時に海外での自動車生産も拡大展開させていた。その積極策は国内で販売するクルマにも波及し、新たなアプローチでデザインした新世代の軽自動車や小型乗用車を相次いで市場に放った。

 

 

■軽初の「ツインカムターボ」に走り屋が沸き立った!

 

軽自動車に関しては、まず1984年9月に6代目となるフロンテおよび2代目のアルトを発売する。フロンテは5ドアハッチバックのボディで構築され、ウィンドウ形状には6ライトタイプを採用。一方のアルトは3ドアハッチバックのボディを導入し、メインユーザーである女性がスカート姿でも気を使わずに乗り降りできるよう回転ドライバーズシートを新設した。2車ともにホイールベースは従来比+25mmの2175mmにまで延長。同時にボディ高も引き上げて広い室内空間を確保する。スタイリング自体はシックで上級感のあるデザインで仕立てられていた。ちなみに、2代目アルトのイメージキャラクターには当時『雨音はショパンの調べ』が大ヒットし、都会的でファッショナブルな女性として人気を集めていた女優・歌手の小林麻美さんが起用され、その好評ぶりから「麻美スペシャル」「麻美スペシャルⅡ」「麻美フェミナ」といったアルトの特別仕様車が発売されるほどだった。

 

2代目アルトは、女性ユーザーに向けたオシャレな仕様の設定だけでは終わらなかった。市場における軽自動車のハイパワー競争に対応した、男の走り屋バージョンも積極的にラインアップしたのだ。まず1986年7月には、軽初の4バルブDOHCヘッドを採用したF5A型543cc直列3気筒DOHC12Vエンジン(42ps/4.2kg・m)を積むツインカム12RSを発売。また同時期、F5A型543cc直列3気筒OHCインタークーラーターボエンジン(48ps/6.5kg・m)を搭載するターボSおよびターボSXを設定する。そして翌'87年2月には、F5A型543cc直列3気筒DOHC12Vユニットにインタークーラーターボを組み込んだ軽初のツインカムターボ車、“Riding Hi”ことアルト・ワークスを市場に放った。

 

初代アルト・ワークスのコクピット。本革巻きステアリング、バゲットシートを装備した“男らしい”インテリア

電子制御燃料噴射装置のEPI(エレクトロニック・ペトロール・インジェクション)にクラス初採用となるESA(電子進角)システムとΦ12白金スパークプラグ、最大過給圧0.9kg/cm2の高速型ターボチャージャー、超小型の油圧式ラッシュアジャスターなどを組み込んだワークスのツインカム12Vターボは、最高出力が64ps/7500rpm、最大トルクが7.3kg・m/4000rpmという強力スペックを誇る。またレッドゾーンが9500rpmオーバー、リッター当たり馬力が117.8ps/lという数値も注目を集めた。駆動機構にはFF(ワークスRS-X)のほか、ビスカスカップリング式フルタイム4WD(ワークスRS-R)を設定。2モデルともにイエローハロゲンヘッドランプ+円形ホワイトフォグランプやバンパー一体式のフロントスポイラー&リアスカート、センターピラー/ドアサッシュブラック塗装、本革巻きステアリング、バケットシートなどを採用してスパルタンなイメージを強調していた。

 

 

■“めかしたスポーツギア”の第2世代


1988年9月になると、アルトおよびフロンテが新世代に移行する。アルトのイメージキャラクターには、『スケバン刑事』の3代目麻宮サキ役でブレークした浅香唯さんを起用。またこの時、ハイパワー軽として人気を集めていたアルト・ワークスはより独自色を強めたシリーズに切り替わり、イメキャラにはポパイ、キャッチフレーズには“めかしたスポーツギア”と謳った。

 

2代目アルト・ワークス。丸目二灯式ヘッドライト、大型エアインテークが特徴的だった


FF仕様のS/XとRS/X、フルタイム4WD仕様のS/RとRS/Rで車種構成した2代目ワークスは、搭載エンジンに新開発したF5B型547cc直列3気筒ユニットのDOHC12Vインタークーラーターボ(64ps/7.8kg・m、RS系)とOHCインタークーラーターボ(58ps/7.4kg・m、S系)の2機種を採用する。従来比で160mmほど伸ばした2335㎜のホイールベースと新設計の強化型シャシーに組み合わせる3ドアハッチバックボディのスタイリングは、ひと目でワークスと分かるように標準アルトとの差異化を実施。丸目2灯式のヘッドランプや非対称のグリル、ナンバープレートをオフセットしたうえでメッシュ式の大型エアインテークを配したバンパー、専用の各種エアロパーツ、13インチアルミホイールなどを組み込んでアグレッシブなルックスを形成した。一方で内包するインテリアには、大径タコメーターを中央にレイアウトした専用デザインの計器盤や3本スポークのステアリング、ノンスリップタイプのペダル、バケットタイプのフロントシートなどを装備し、スポーティかつ運転に集中できるコクピットに仕立てていた。

 

リアスポイラー、サイドステップ等、専用エアロパーツを装備する


1990年3月になると、軽自動車の新規格に対応したビッグマイナーチェンジを敢行する。基本スタイルは従来を踏襲しながら、ボディ長を従来比+100mmの3295mmに延長。搭載エンジンはF5B型のボア径65.0mmを維持しながらストロークを55.0mmから66.0mmにまで伸ばし、排気量を657ccとしたF6A型直列3気筒ユニットのDOHC12Vインタークーラーターボ(64ps/8.7kg・m、RS系)とOHCインタークーラーターボ(61ps/9.2kg・m、ターボi.e.系。7月に追加)の2機種を設定した。さらに1992年6月になると、モータースポーツのベース車両となる4WD仕様のワークスRを発売。装備を簡略して軽量化を施し、同時に専用のターボチャージャーや大型のインタークーラーおよびラジエターファン、クロスレシオ5速MTなどを組み込んだワークスRは、全日本ラリー選手権Aクラスや全日本ダートトライアル選手権A1クラスなどを舞台に至極の速さを見せた。


軽自動車販売台数のトップメーカーであるスズキのイメージリーダーとして、さらには開発スタッフにやる気と緊張をもたらす究極のスポーツモデルとして、確固たる地位を築いたWORKS。その孤高のポジションは、後のモデルにも着実に引き継がれていったのである。

 

【中年名車図鑑】

Vol.1 6代目 日産ブルーバード

Vol.2 初代ダイハツ・シャレード・デ・トマソ

Vol.3   4代目トヨタ・セリカ

Vol.4   初代トヨタ・ソアラ

Vol.5   2代目ホンダ・プレリュード

Vol.6   5代目マツダ・ファミリア

Vol.7   初代スバル・レガシィ

Vol.8   2代目いすゞ・ジェミニ
Vol.9  初代・三菱パジェロ

Vol.10  5代目・日産シルビア

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大貫直次郎

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

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