増え続ける若者の自殺…SNSや医療業界が注目する「AI自殺予防」の可能性

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Googleで「死にたい」と検索すると…


■若者の自殺件数は年々増加。AIで自殺を未然に防げ!

厚生労働省によると、警察庁の自殺統計に基づく2016年の自殺者数は2万1764人であり、前年より2261人(9.4%)少なく、減少率は過去最大でした。7年連続減少であり、22年ぶりに2万2000人を下回りました。一方、若年齢層の自殺はここ数年増加し続けています

これをうけて、AI(人工知能)を使った自殺を未然に防ぐ試みが始まっていることをご存知でしょうか。声のトーン、生活パターン、ソーシャルメディアへの投稿などのデータを収集し、AIで分析して自殺を未然に検知し、防ぐためのアクションを起こす仕組みが各所でスタートしています。

Facebookは、自殺や自傷行為をほのめかすユーザーを助けるための取り組みを続けています。以前より、自殺の疑いがあると報告があったユーザーに対して、自殺防止ホットラインを運営するカウンセラーとのチャットを勧めるメールを送信。報告されたユーザーがFacebookにログインした際には、カウンセラーへの相談、友達に相談するためのリンク、困難な状況に対処するためのヒントを紹介するメッセージを表示するなどしてきました。

さらにFacebookでは、これらの報告を利用し、類似の投稿を見つけ出すためのアルゴリズムを作成しています。テキストから見つけ出すだけなら容易ですが、実際は動画などからも見つけ出す必要があります。動画の中から裸の人や銃、ナイフなどを見つけて特定する技術は実現しているので、自殺をほのめかす動画を特定できるようになる日も近いでしょう。


■テクノロジー業界が注目する自殺防止

自殺防止に取り組んでいるのはFacebookだけではありません。Twitterでも同様で、自殺など助けを必要とするツイートをしたユーザーに対して、相談窓口の案内を連絡するなどしています。

さらにGoogleやYahoo!では、自殺願望を想起させる書込みを見つけたら、自殺を防止するような表示結果が表示されるようになっています。たとえばGoogleで「死にたい」などのキーワードで検索すると、かけると各都道府県・政令指定都市が実施している公的相談機関につながる「こころの健康相談統一ダイヤル」の電話番号が表示されます。Yahoo!でも同様の結果になります。

若者がSNSを日常的に利用することはよく知られています。誰にも相談できない人でも、普段接しているSNSになら本心を書き込む可能性があります。実際、Facebookの取り組みには一定の効果が出ているようで、認定NPO法人国際ビフレンダーズ東京自殺防止センターでは、「Facebookに情報を掲載してから10~20代の若者や初めて電話をしてくる人からの相談が増えた」といいます。


■医療業界もAIに注目

AIによる自殺防止に注目しているのは、テクノロジー業界だけではありません。スペインでは、精神病者を自殺や他のリスクから守るためにAIを活用した実証実験が行われています。患者の過去の医療データと医療関連の学術論文などのオープンデータをAIが分析することで、想定される患者の健康リスクを表示してくれる仕組みです。これによって、85%以上の精度で自殺・アルコール依存・薬物依存などのリスク算出に成功しました。

さらに、これまで紙ベースだった患者の診断記録や様々な情報の確認をシステム化することにより、患者一人あたりの診断時間は半減。その結果、医師は患者の問診により多くの時間をかけることができるようになり、患者の潜在的リスクをもっと高い精度で発見できるようになったのです。

自殺には、多くの場合に前兆が見られます。その一つが、「死にたい」「生きていても仕方がない」という言葉です。その他にも、生活態度が変わったりなど、多くの変化が見られるものです。しかし、その兆候を見逃してしまったり、心配しながらも行動しないことは残念ながら少なくありません。

その結果、悲しい自死につながってしまい、周囲の人々や遺された遺族にも深い傷を残すことになります。もちろん、普段から家族や身近な人の兆候をしっかり見極め、関係性を築いておくことが一番大切なことです。しかしそれでも見逃してしまったとき、AIは悲劇を避けられる可能性を高めてくれるかもしれません。

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高橋暁子

高橋暁子

元小学校教員。Webの編集者などを経て独立、現職。 書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著作多数。SNS...

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